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2004.07.18

燐光群「私たちの戦争」を観た。何度も腹を抱えて笑った。そして、ちょっと泣いた。

18日、下北沢スズナリにて。

休日の過ごし方ってあまり事前にきちんと予定を立てる方ではなくて、今日も昼間はどうしよう、とネットで公演情報などをチェック。すると15日から上演中の燐光群「私たちの戦争」の終演後に、作・演出の坂手洋二さんと原作者の一人である渡辺修孝さん(イラクで拘束された市民運動家)によるアフタートークがあることに気付いた。どうせ観に行くつもりだったのだから、この機会を逃す手はない。

坂手さんは開演前、ロビーにいることが多いので、会場に着くとロビーを見回して坂手さんを探すのが習慣になっている。さて今日は・・・

いたいた。まず軽く御挨拶。「渡辺さんって・・・」と切り出すと左を指差す。なんと隣にいらしたのがご本人だった。確かにテレビやネットで見た顔だ。凄絶な体験をされたとはとても思えない柔和な雰囲気が意外だった。同世代ということでなんとなく親しみを持ってしまう。「じゃまた後で」と客席へ。そして開演。

坂手さんが得意とする、「事実」を積み上げて構築するタイプの戯曲。目の前で行われる芝居そのものは、言うまでもなく虚構である。狭い意味でのリアリティはないはずなのだが、ズシリと胸に迫ってってくる。これが演劇の力だ。「虚構」を前提とすることで、新たなリアリティが生み出され、ある面ではビデオカメラが捉えた現実の映像をも超えるのだ。

中盤では役者が演ずるwattanこと「渡辺修孝」が主人公だ。渡辺さん本来のユーモア感覚溢れるキャラクターとそれを演じる役者の力量、そして坂手さんの見事な構成力のお陰で、ぐいぐいと芝居に引き込まれる。シリアスなテーマなのにこんなに笑えていいのだろうか、と思ってしまう。笑うしかないような滑稽な「現実」が、そこにあるということなのだろう。

演劇に政治的な主張が盛り込まれることを煙たく感じる人もいるだろう。実際坂手さんはその辺り、かなりストレートである。だが一方で、大笑いしたりホロリとさせられたりジーンときたり、とこれはもうエンタテイメント以外のなにものでもないのだ。「主張」こそエンタテイメントの本質じゃないかとすら思えてくる。いくらおいしくても、甘いデザートばかりじゃ心からの満足感は決して得られないし、栄養失調になってしまう。

というわけであらためてこの「私たちの戦争」と「だるまさんがころんだ」を学生向けに推薦します。絶対面白いってば!8月4日まで。

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Comments

fringe blog( http://fringe.jp/blog )内の「しのぶの演劇レビュー」で「私たちの戦争」がレビューされていたのでトラックバックを送信しておきました。「だるまさんがころんだ」は朝日新聞の賞(名前失念)に続いて読売演劇大賞にもノミネートされているらしい。朝日・読売のダブル受賞になったら画期的だなあ。

さて「私たちの戦争」は3つの短編のオムニバス形式なのだけど、その中の『Blindness〔盲目〕』について、しのぶさんのレビューの中で
「完全なフィクション」とあったので補足しておきます。作者のマリオ・フラッティさんさんが19日の講演会で話されたところによれば、フィクションとはいっても実際の新聞記事に基づいているそうです。複数の記事内容を組み合わせて構成したらしいのだけど、野田学さんが「caricatureしたのか」と質問したところ、「していない」というお答えだったと思います。

Posted by: tokunaga | 2004.07.31 at 11:15 AM

はじめてコメントさせていただきます。
いつもすごく勉強になるので拝見させていただいております。

そうなんですが、完全なフィクションではなかったんですね。
もしかすると当日パンフレットなどにもちゃんと書かれていたのかもしれませんよね、失礼いたしました。
私のレビューに少し補足を書きました。ありがとうございました。

Posted by: しのぶ | 2004.09.08 at 08:13 AM

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