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2005.02.06

大友良英ソロライブをレディジェーンで聴きながら、快感と感慨に耽る

書いているのは12日なのですが、日付はライブ当日(6日)に合わせました。今後ライブレポなどはそうしようと思います。

天気の良い日曜日。昼間に別の公演を観に行った後、夜はなにがあったっけ、と考えて、大友良英さんのソロライブ(ギター&ターンテーブル)が下北沢のレディジェーンであるのを思い出して井の頭線を途中下車した。

「なす親爺」(カレー屋)で腹ごしらえしてから向かったがまだ開場前。顔なじみのバーテンダーさんが「ご予約されてませんよね」とおっしゃる。レディジェーンで顔と名前を覚えられるとは僕も偉くなたもんだ・・・と一瞬感慨にふける。同時にその問いは、予約がかなり入っていることを示していた。一人のときは開演ギリギリに行くことが多いのだが、この日は早めに行ってよかった。たまたま原尞(ハラ・リョウ)「愚か者死すべし」を買ったばかりだったので退屈する心配がなかったのだ。

大友さん人気あるもんなあ。1月のピットイン5デイズに結局1日も行けなくてかなり欲求不満が溜まっていた僕のような客もいれば、5デイズで感動して「ソロも聴きたい!」と思った人だっているだろうし。ご本人は嫌がりそうだが、大友さんは間違いなくアンダーグラウンドシーンのヒーローである。大友さんのライブは、いつ行っても混んでいるという印象がある。いわゆる「前衛」に近い(この言い方も嫌がられそうだ)、他のミュージシャン達のライブはそうではない。

演奏は半ば予想していた通り、ギターの轟音で始まった。いつ終わるとも知れぬノイズのような(この言い方にも問題があるが・・・語彙不足にてご容赦を)持続音。もしなんの予備知識もなく聴きに来ていたら、「とんでもないライブに来てしまった」と思うだろうなあ。「一体これのどこが音楽なのだ!」と怒りだしたりして。そう、ただの持続音は音楽ではないだろう。

だがそれを止めた瞬間、音楽になる。

いや正確に言うと、「いつまで続くのだろう」「どこで止まるのだろう」「次の展開は?」などといった思いが脳内を駆け巡った瞬間から音楽は始まっているのかもしれない。それがケージの「4分33秒」やデュシャンの「泉」のようなConceptual Art(じゃないかもしれませんけど、すみません、あんまり教養ないんで)と決定的に異なるのは、生理的な快感を伴うということだ。実際僕は、ちょっとニヤついた顔で聴いていたと思う。それをsnobismというなら、こういうのは「良いsnobism」だと開き直ってしまいたいほどだ。

とはいえ、僕ももうそんなに若くないので、轟音ばかりじゃつらいかもしれない。大友さんは一方で、多数の映画音楽(特に相米慎二監督晩年の傑作!)を手がけたことでも知られ、非常に美しい作品をたくさん作り出している。美しいメロディが嫌いな人なんていないのだ。要はバランスの問題で、甘いケーキとブラックコーヒーの関係のように、どちらが欠けても人生はつまらない(決してバレンタインデーが近いから書くわけじゃないが僕は甘いものも大好きである)。この日も、1st setの最後にやったスタンダードの演奏(ただしときどき轟音)が心に染みた。

あとは音色だな。2nd setに出てきたエレキギターの音。ピアノの弦を金属のハンマーで叩いているような・・・どうやって出しているのだろう。これは本当に快感だった。

MCでは、かつて西麻布にあったレディ・ジェーンの姉妹店「ロマニシェス・カフェ」の話題が。大友さんは87年か88年に同店に初出演したそうだ。僕が大友さんのライブを初めて観たのもその頃で、会場はロマニシェス・カフェだった。大友さんは自作のエレキギターを激しく掻き鳴らしてたっけ。僕は「とんでもないライブに・・・」とちょっと思ったかもしれない。場所柄、チャージもドリンクも安くはなく、学生の身にすればかなり無理をしていたかも。しかし今となっては、そんなことを懐かしく思い出せるだけでも嬉しい。経験は財産だとつくづく思う。そして終演後は、「いい音楽を聴いた」という充実感でいっぱいになった。

というわけで、ものすごく楽しめたライブだったので、久々に日記風の長文を書いてみた。間もなく発売される大友さんのソロアルバムも楽しみだ。

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Comments

いい経験なさってますね! 読んでるだけのわたくしまでなにか感慨深いものが…
原尞ってフリージャズやってたらしいですね。どんなんだったんでしょう?

Posted by: k_17g | 2005.02.14 at 09:30 PM

私は大友さんの音楽が、いまいち判りません。先日のPitInnでも、何だかしっくり来ないんです。
良さが感じられなくなったのかとも心配しています。

ソロアルバムは沼田さんのレーベルで出されるそうですね。

Posted by: maida01 | 2005.02.14 at 11:23 PM

k_17gさん、 maida01さん、コメントありがとうございます。

原尞さんは1970年代にニュー・ジャズ・シンジケートの中心人物として活躍しておられたようです。読んでみようと思ったきっかけは、知り合いが絶賛していたのと、inFの佐藤店主(同じくシンジケートの元メンバー)の日記に出てきたことです。音源としては豊住芳三郎さんのアルバムが最近CD化されたそうで、手に入りやすいようです(某掲示板情報)。

大友さんの音楽は僕にとっても掴みかねる部分もありますけど、常に気になる存在ではありますね。ソロアルバムもですが、さがゆきさんが歌っているらしい中村八大作品集がどうなっているのか楽しみです。

Posted by: tokunaga | 2005.02.17 at 08:09 PM

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