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2005.03.14

大友良英と浜田真理子による「カナリア」をレディジェーン30周年記念祭で聴いて、次の日に映画「カナリア」を観るという素敵な週末

まず12日。
昼の3時から池袋の東京芸術劇場に、北九州の劇団「飛ぶ劇場」の「Red Room Radio」を観に行く。

かなり期待が大きかったこともあるが、率直に言ってやや肩透かしをくらった感がある。この劇団の作品はこれ以前に3本観ているが、現実にはあり得ないような話を丁寧に描いて不思議なリアリティを醸し出していたところ、途中に挟まれる幻想的なシーンが美しくて、リアルな芝居とのバランスが絶妙なところなどが非常に気に入っていた。今回は久々に観たからなのか、随分作風が変化していると感じた。陰惨なシーンが多いのはいいのだけれど、どこかで観たような陰惨さ。松尾スズキあたりを連想する人は多いと思うのだけど、松尾スズキほど突き抜けた感じはない。

だが好意的に捉えれば、作風の幅広さは作者の力量でもある。「へーこんな芝居もやるんだ」という新鮮さもあったし、初めて見る役者の中にも光るものを感じる人が複数いた。今後も注目していきたい劇団であることに変わりは無い。次回本公演は過去に見損なった「IRON」の再演だそうで、初演の評判が良かったようだからかなり楽しみだ。

夜はベニサンピットのレディジェーン30周年記念祭へ。

大友良英(ギター&ターンテーブル)+浜田真理子(ピアノ弾き語り)、伊藤多喜男バンド(ドラムは村上ポンタ秀一!)によるライブ+立食パーティという構成。チケット代7500円というのは一見高そうだけど、飲食代込みでお土産にオリジナルラベルのワインも付くという大盤振る舞いで、申し訳ない気持ちになってしまうほど。

大友さんと浜田さんの共演は、ステージでは初めてだというから貴重な体験だった。ピアノ弾き語りに絡む大友さんのギターが刺激的で、かつ美しかった。偶然(だそうです)にもこの日封切だった映画「カナリア」の主題歌(作詞浜田真理子・作曲大友良英)などを演奏。

浜田真理子さんは島根在住のシンガーソングライターで、インディーズから出したCDが数万枚の売り上げを記録して話題になった。テレビ番組「情熱大陸」で紹介されたときにはもう知る人ぞ知る存在になっていたのである。ロック系なんかだとインディーズでバカ売れしてメジャーデビュー、なんて話は珍しくないけど、それはたいてい頻繁にライブをやってファンを増やしたケース。浜田さんの場合は、たまに東京に出てきて歌うだけ。多くの人は顔も知らず、純粋に音楽に惹かれてCDを買ったのである。僕も含めインディーズでCD制作に携わる人間というのは「いい音楽は口コミで売れるはず」と信じたいのだが、現実はそう甘くない。やはりマスメディアの力、特にテレビの力が圧倒的なのだ(余談になるが、ホリエモンって個人的にあまり好感は持てないけどインターネットを放送メディアと結びつけることによって威力を増そうとする戦略はまったく正しいと思う)。浜田さんの成功は僕らにとって一つの希望だ。

なお、浜田さんのケースでは「口コミ」において大きな役割を果たしたのがレディジェーンのオーナー大木さんです。大友さんもレディジェーンでCDがかかっているのを聴いて知ったそうだし。

13日昼は駒場アゴラ劇場で五反田団「キャベツの類」を。一言で表すなら「笑える不条理劇」。いやあ、よく笑った。前作「いやむしろ忘れて草」がかなりシリアスな、しんみりとした話だったのと対照的。この人も芸風が広い。今回もラストは多少しんみりとするけど、そこに至るまでが…。役者もみんないい味出してるなあ。

さて夜はどうしよう、と思案したところ、前日の余韻もあって映画「カナリア」が無性に観たくなった。渋谷アミューズCQNへ。

これが大当たり。主演の石田法嗣と谷村美月が素晴らしい。二人とも目に力があって、口から出るセリフ以上に多弁だ。りょう、西島秀俊、甲田美也子ら脇を固める役者も良い。

オウム真理教(映画では「ニルヴァーナ」)の事件は題材として重要なのだけど、「オウムの映画」というレッテルを貼られたら不幸である。映画自体もだけど、勘違いして見そびれる人が不幸。

これは一種のロードムービーであり、少年と少女の成長の物語。家族という共同体の再生の物語。なんかカッコイイんだよな。特にラストはちょっとゾクっとするほどのカッコよさ。エンディングテーマを歌うZAZEN BOYSの向井秀徳はどちらかというと苦手なタイプなんだけど、この映画には「これしかない」と思えるくらいハマっていた。ファンは当然必見ですね。セカチューのラストで大いに脱力した僕に共感してくれる人も是非見てちょうだい。

現代のニッポンで、ウソ臭くないロードムービーを成立させるためには、オウム事件という「現実離れした現実」が設定として必要だったのかも(本来の意図はそうでなかったにせよ)。だってそうでしょう、娯楽的な旅行や単なる家出じゃ「旅すること」についての切実さが感じられない。

ちなみに地下鉄サリン事件について谷村美月は「知らなかった」、石田法嗣も「テレビで過去の事件として取り上げられたのを見て知っていただけ」だそうである。あれから10年も経ったんですね。。。

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Comments

こんにちは、tkrです。
トラックバックありがとうございました。

「カナリア」は題材が微妙なため、観客動員が若干難しいと思いますが、是非多くの人に観ていただきたい作品だと思います。

ところで、「村上ポンタ秀一!」の!に驚愕です。
最近あまり名前を聞かない(わたしの勉強不足かな)のですが、まだまだ現役でタイコを叩いているのですね。

以前青山でやった「大村憲司トリビュートコンサート」に出てきたときにも吃驚しましたが、やはりセッションやスタジオ・ミュージシャン的な活動をしているのでしょうか。

Posted by: tkr | 2005.03.15 at 02:02 PM

コメント&トラバありがとうございます。村上ポンタさんは現在も日本のトップドラマーとして活躍されてますよ。リンク先の公式サイトをごらんください。セッション・スタジオもですが、ポンタボックスなど、むしろご自身の看板を掲げての活動が増えているように思います。

Posted by: tokunaga | 2005.03.16 at 01:46 PM

TBありがとうございます。
幅広い趣味をお持ちなんですね。
芝居もライブも、もっともっと観にいかなきゃ、
と思ってしまいました。

『カナリア』のエンディングは衝撃……
いや、ある意味笑撃でした。
でも監督にとって、あれっきゃなかったんでしょうね。この物語の結末は。

またエンディングテーマの歌詞が凄い!
そして確かに「これしかない」というハマり具合でした。

Posted by: ぜんば | 2005.03.16 at 02:46 PM

コメント&TBありがとうございます。自分の記事を書いてから検索で他のサイトのレビューをチェックしたわけですけど、ぜんばさんのも含め共感できる内容が多かったですね。「これは石田法嗣の映画なのだ」というのも同感です。エンディングの「説得力」(と感じない人もいるかもしれないけど)も、彼があそこまでに積み上げてきた演技の力が大きいと思います。

Posted by: tokunaga | 2005.03.16 at 04:58 PM

お返事遅くなりまして失礼致しました。
TBありがとうございました。
私もTBさせて頂きたいと思います。
今後ともよろしくお願い申し上げます。

浜田真理子、大好きです!
でも「カナリア」は聴いたことないです。
今度探して聞いてみることにします。

Posted by: fashionista | 2005.03.16 at 09:39 PM

fashionistaさん、コメントありがとうございます。他の記事も少々読ませていただきましたが、かなりお若いのですね。浜田真理子さんのファンって、もう少し上の世代の人をイメージしてました。映画「カナリア」もぜひご覧下さい。出版関係のお仕事を希望されているようなので、なおさらお勧めですよ。このblogでお勧めしている他の音楽・演劇関係の情報にも関心を持っていただければ幸いです。

Posted by: tokunaga | 2005.03.17 at 06:24 PM

TBありがとうございます。
#すみません、二重TBしてしまいましたので、
お手数ですが、一つ削除願いますm(_ _)m
この作品には、大変感銘を受けました。
子供達の真っ直ぐな視線から感じる再生と、
それを取り囲む独特な世界観が印象に残りました。

Posted by: Rica | 2005.03.18 at 02:13 AM

Ricaさん、コメント&TBありがとうございます。TBは片方削除しておきました。

舞台挨拶のレポートを興味深く読ませていただきました。そして西島秀俊さんのファンでいらっしゃるのですね。かつて僕が「(雰囲気が?)似ている」と言われたことがある数少ない芸能人の一人ですが、映画でのかっこいい西島さんを観ると、自分でも「どこが!」と思います(笑)。西島さんも重要な役どころで、ファンの方はもちろん必見でしょうね。

Posted by: tokunaga | 2005.03.18 at 03:22 PM

コメントありがとうございます。読ませていただきました。全体的に共感したのですが、特に

>「オウムの映画」というレッテルを貼られたら不幸である。映画自体もだけど、勘違いして見そびれる人が不幸。

の部分で、自分と同じ考えの人がいたのだと少し感動しました。
 また見させていただきます。

Posted by: ilovemovie-K | 2005.03.24 at 05:56 PM

ilovemovie-Kさん、コメント&TBありがとうございます。それと後で気付きましたが、大学に合格されたということで、おめでとうございます!

そうなんですよね。僕もその後、批判的なレビューも含めていろいろ読んだ上であらためて思うのですが、「オウムに対する掘り下げが甘い」という批判は少々的外れだと感じます。主題はどう考えてもそこにはないですから。

「オウムを設定として利用するのはあざとい」と批判するならわかります。でもポスターのヘッドギア姿だけで引いちゃう人だっているわけで(興行的にはかなり痛いはず)、そこは制作側として最低限の筋を通したということなのでしょう。

あと映画自体の評価が低い人でも、主演の二人を含め役者が良かったというのは一致しているように思います。その意味でも、もっと注目されて欲しいですよね。

Posted by: tokunaga | 2005.03.25 at 12:49 PM

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