« 三好功郎のギターにまたまた痺れてしまいました | Main | 坂田明(Sax)+ジム・オルーク Jim O'rourke(G)セッションでインプロの魅力についてあらためて考える »

2005.04.19

日曜の午後からフラっと青年団プロジェクト公演「隣にいても一人」を観に出かけ、「おしゃれジプシィ」のライブ(ベリーダンス付き)を観ながら夕食を取るという、優雅な東京生活

まあ「フラっと」と言っても、前日に予約はしたわけですが。17日、まずは青年団プロジェクト公演「隣にいても一人」を観に、うちから徒歩3分の駒場アゴラ劇場へ。

いやあ、何度観ても面白い芝居だな。今年度も法人支援会員になったので、さっそくチケット引換券を使おう、というのもあるわけだけど、会員じゃなくても映画当日券より安い1500円。このコストパフォーマンスに対抗できる娯楽がほかにあるのか?「しずかな演劇」は苦手、という人もそこは認めざるを得ないでしょ。

ちなみにこの作品を観たのは3回目かな。観たことがある人はわかると思うけど、役者が変わると微妙にキャラクターが変わってまた興味深い。今回は「新婦」役の角館玲奈さんが「新郎」役の臼井康一郎さんより年上だったようで、前は「妹」だったところが「お姉さん」に代わっていたりした。セリフの中に出てくる年齢は実年齢だろうか。たしか角館さんは僕が青年団を観始めた頃、「カガク」シリーズの学生役とか初々しくやってたと思うんだけど。あれから随分経ったんだなあ、と芝居と関係ない部分で感慨に耽ったり。

それにしても本当によくできた脚本である。元は外部からの依嘱で書かれたこともあってか、テーマも構造もわかりやすい(最初はナンダ?と思うが観ているうちにすぐわかる)。なにせ平田作品にしては珍しく暗転が3回くらいあるし、「夫婦って結局何よ?」という問いかけがきわめてストレートになされる。コアな平田オリザファン(いるのか?)だったら「こんなのオリザじゃない!」とか言いそうだ。

そういう作品だと知っていたから、安心して他人に勧めることができた。同僚、学生各1名ずつと一緒に観たが、なかなか良い反応。観たことがない芝居を勧めるのは勇気がいるからなあ。


ところで僕の場合、東京に出てきて芝居を観るようになったきっかけは、高校生のとき地元で観た「上海バンスキング」にめちゃ感動したとか80年代演劇ブームとか初恋の相手が演劇少女だったとかいろいろあるが、一番大きいのは

東京に出てきたんだから、芝居ぐらい観とかないとまずいだろう

という感覚である。僕は人一倍「教養」というものにコンプレックスがありつつ教養部で教えてたりするわけだが、なぜかこの「まずいだろ」という感覚が古典文学とか思想・哲学といった方にはほとんど向かなくて、「ゲンダイオンガクぐらい聴かないとまずいだろ」「フリーインプロヴィゼイションというのもわかったフリをしておかないとまずいだろ」という方面に向いてしまった。

お陰で今はなき西麻布ロマニシェスカフェでギターを掻き鳴らす若き日の大友良英さんを見た話を大友さん本人にして感心されたりして。というのも場所柄、学生が行くには高い店だったのだ(大友さんも「客として行くのは勇気がいった」とおっしゃっていた)。よくそんな金あったな、と今さらながら思うが、なんとかしてたんだなあ。

芝居はライブと違って別にドリンク代を取られたりしないが、それでもそこそこのクオリティが保証されたもんを見ようと思ったら、通常は最低3000円くらい覚悟しないといけないだろう。それを考えると今回のように定価1500円、支援会員になると(一回あたりは)それ以下で観られて、脚本も役者も高いクオリティが保証されているというのはありがたい。別に支援会員になったからヨイショしてるつもりはなくて、率直な感想である。

そして、こういうのは「東京に住んでいればこそ」なのである。文化の東京集中は東京近郊以外に住んでいる人にとっては大問題なのだろうが、東京に住む観客・リスナーの立場からすれば、この利点を最大限活用しない手はない。金が無かったら「安くていいもの」を探せばよい。東京ではそれが可能なのだ。

が、そのように思わない人がけっこう多い、というのが、実はもっと大きな問題だと思うんだけど。

というわけで、このページに辿りついてしまったうちの学生のみんなに言いたいのは、以上を読んで自分のおかれている状況を理解したら、もはや「よく知らない」とか「チケットが高い」というのは言い訳にならないということ。それでもまだ行動しないならそれは、「芝居を観ない」「生演奏を聴かない」という選択を積極的に行っているということである。だって全然金がないならともかく、ディズニーランドとかは行ってるだろ。情報はその気になれば、インターネットでいくらでも手に入る。大学なら使用料はタダだ。


夜は「おしゃれジプシィ」のライブを観に中目黒「楽屋」へ。ここは料理も美味いし、ワインなども手頃な値段で(詳しくないけど、たぶん)なかなか良い品揃え。「おしゃれジプシィ」はリーダーのウード奏者佐藤慶一さんのオリジナルを演奏するアコースティック・プログレバンド(いろいろ考えたが、この呼び方が一番実態に近いと思う)だ。「現代パフォーミングアーツ入門」の授業でお馴染みのヴァイオリニスト喜多直毅さんも参加しており、アドリブ・ソロをガンガン弾きまくる。途中からアラブ映画祭2005(24日まで・詳細はこちら)の関係者もいらして、映画祭の宣伝を少々。アンコールのアラブ音楽で盛り上がる。これも東京ならではだなあ。

|

« 三好功郎のギターにまたまた痺れてしまいました | Main | 坂田明(Sax)+ジム・オルーク Jim O'rourke(G)セッションでインプロの魅力についてあらためて考える »

Comments

トラックバックありがとうございます。以前こちらからも送ったんですが、こちらの記事の方がふさわしいので、前の
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/3724650
へのTBは削除しておいて下さい。

演出について2,3印象的な場面をメモしておくと(ネタばれ注意)、この作品の中で、弟はしばしばお茶をいれるのに席を立つんですね。

その立ち方が、いかにも「ばたっ」という感じの無骨さで、皆が少し静かに、真面目に話しているさなかにそうするもんだから、兄はその都度どっきりして、「あいつは何故いつもあんな風に唐突に立つんだ」と不平をこぼす。

あそこが、とてもよかった。

彼がそんな風に立ちあがる場面は、劇中2回あります。一度目は自分の(お茶をいれる)ために、二度目は他の人たちの(お茶をいれる)ために、立ちあがる。しかも兄に「なんだよ?」と問われて、その都度その理由を言うんですね。つまり、一度目は自分のためだと言う、もう一度は、他の人たちのためだと言うのです。

もうひとつ印象的なシーンは、やはりお姉さんが、自分の酔っ払い体験を話すところかな。

本当に酔っ払って、ある朝ぜんぜん知らない人の家で寝かしてもらっていた、と。しかも相手は一人暮しじゃなくて、ご両親がいた、と。相手もこっちを良く覚えておらず、その人は朝になると会社に行ってしまう。そこで、別に本当は娘の友達というわけでもないのだが、この知らない人の知らないお母さんと、自分もにこにこしながら、相手もニコニコしながら、一緒に朝食を食べた、と。

これはこれで、ある朝突然、知らない人と「母子になってしまった」体験と言えそうです。劇中で劇のメインテーマを反復してますね。

『隣にいても一人』という不思議なタイトルは、別に寒寒とした荒涼をあらわしているのではなく、多分このなんともいえない「にこにこ」をあらわしているのではと僕は思いました。

うまく言えないけど、悲壮な孤立感じゃなくて、ふわふわした孤立感。「人それぞれ、されど仲良し」みたいなオプティミズムもなくはない。そんな感じ。

面白かったですよ。

Posted by: yoshida | 2005.04.19 at 01:02 PM

吉田さん、遅くなりましたが感想サンクス。平田オリザ作品はいつもあっさり終わるんですが、この戯曲のラストは好きですね。ちゃんと伏線が効いているし。

Posted by: tokunaga | 2005.04.23 at 11:53 AM

去年のレビューにTBありがとうございます。
そうですかー、妹から姉になってたとは。是非観たかったなー。残念ながら今年は行けないのです。
私も誰にでもお薦めできる素晴らしい演劇作品だと思います。しかも定価1500円。こまばアゴラ劇場から発信する豊かな東京芸術ライフに私も一票。

Posted by: しのぶ | 2005.04.23 at 01:24 PM

こんんちは!トラバありがとうございます。盛岡での上演は2月でした。平田オリザさんも劇場にいらしていてニコニコと対応されていました。「隣にいてもひとり」のタイトルに魅かれて身にでかけましたが内容は期待していたのものとは違っていてそれはそれで心に残る作品でした。仕事が終わってごはんを食べてのんびり寄る8時から始まる芝居小屋での上演で、地方都市の良いとこどりです。

Posted by: ai | 2005.04.23 at 06:27 PM

TBありがとうございました!
実は私、この「隣にいても一人」がオリザさん初体験でして
(ソウル市民は書籍を買って読みましたが)
今まで見てきた芝居との空気の違いに
「ほ、ほええぇぇ?これで終わり?でもおもしろかった(^^)」
という感じでした。ので、「オチが無い」って感じたんです(汗)
これからもオリザさんの作品いろいろ見てみたいと思ってます。

やっぱり東京は芝居見やすい環境ですね!その気になれば毎週でも何らかの公演見られますし。
「東京は安くていいものが探せる」という意見に力いっぱい頷いてます。
来月も2000円以下の芝居を4本見る予定をすでに立ててます。ブラボー東京。

Posted by: 霜月神楽 | 2005.04.24 at 12:50 AM

みなさまコメントありがとうございます。

>しのぶさん
今回のキャスト、なかなか良かったと思います。
観に行けないといえば、ジンガロのチケット取ってない・・・
うーんGWに突入してしまいますね。まずいな。

>aiさん
アゴラも平日午後8時からの公演はけっこうあるんですよ。でも公共ホールのコンサートなんかは圧倒的に7時が多くて、これはなんとかならないものかと思います。

>霜月神楽さん
僕も最初に青年団の芝居を観たときは、「イントロが長いなあ、いつ物語が始まるんだろう」と思っているうちに終わってしまいました(笑)。何度か観るうちに、さりげない会話の中にも物語があるということがわかってきましたけど。

Posted by: tokunaga | 2005.04.27 at 08:37 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/19691/3764077

Listed below are links to weblogs that reference 日曜の午後からフラっと青年団プロジェクト公演「隣にいても一人」を観に出かけ、「おしゃれジプシィ」のライブ(ベリーダンス付き)を観ながら夕食を取るという、優雅な東京生活:

» 青年団プロジェクト公演・平田オリザ作・演出『隣にいても一人』@こまばアゴラ劇場 [erewhon diary]
同僚の誘いで平田オリザ作・演出『隣にいても一人』(於こまばアゴラ劇場)を観劇。 [Read More]

Tracked on 2005.04.19 at 12:46 PM

» 青年団『隣にいても一人』5/8-11、6/18-22駒場アゴラ劇場 [しのぶの演劇レビュー]
 『ヤルタ会談』の後にやってました。これは1時間。  目がさめたら突然、夫婦だっ... [Read More]

Tracked on 2005.04.23 at 01:17 PM

« 三好功郎のギターにまたまた痺れてしまいました | Main | 坂田明(Sax)+ジム・オルーク Jim O'rourke(G)セッションでインプロの魅力についてあらためて考える »