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2005.05.20

青木菜穂子カルテット、早川純トリオ、エル・タンゴ・ビーボと立て続けに聴いて、タンゴはカッコイイという極めて単純な事実を再認識

11日に青木菜穂子、17日に早川純を聴いてタンゴが再びマイブームに。今日はinFにエルタンゴビーボ+北村聡を聴きに来ました。
(以上ケータイより)

以下本編。

逆説から始めよう。僕はこの日、大泉学園inFで絶品の水餃子を久し振りに味わい、エル・タンゴ・ビーボ(pf熊田洋, b東谷健司, ゲスト北村聡bandneon, 飛び入りゲスト会田桃子vln, 島サチコvo)のかっこいい演奏を聴きながら、「僕はやっぱりタンゴファンってわけじゃないんだよなあ」とつくづく感じたのである。

だが僕は今月、インストアライブを含めれば実に4回もタンゴのライブを聴いたのだ。月に4回以上ライブに行くタンゴファンが日本にどれだけいるだろう?そのぐらい聴けば、イッパシに日本のタンゴシーンについて語ってもいいんじゃなかろうか。というわけで以下の記事への反論は、月に5回以上タンゴのライブを聴く方に限り認めます。


って冗談ですよ。それはさておき。

発端は5月4日にヤマハ銀座店で行われた青木菜穂子(pf)さんのCD「ティエラ・ケリーダ」発売記念インストアライブ。青木さんの経歴などはそれまでほとんど知らなかったのだけど、CDを発売したのが知人であるギタリスト近藤秀秋さんが主宰するビショップレコードだったので、案内メールをいただいた。共演が会田桃子さん(vln)。青木さんはブエノスアイレスで活躍していたとのことだしヴァイオリンが会田さんならハズレはなかろう、と聴きに行く。

このときの演奏は、率直に言ってそれほど強い印象は残っていない(もしくは後述のライブの印象にかき消されたというべきか)が、これはおそらく演奏者のせいではない。この日は天気もよく、銀座の歩行者天国を背にしたヤマハ1Fフロアでのライブは気持ちよかったけど、PAはイマイチで音響的にはちょっと厳しいものがあった。

それでもCDは購入。失礼ながら動機としては青木さん本人より共演している本場ブエノスアイレスの若手トップ奏者の演奏を聴いてみたい、というのが大きかったかも。あと、レーベルオーナーの近藤さんは義理やしがらみだけでは動かないだろうから、買って損はないクオリティであるはず、という読みもあった。

予想は見事に的中して、このCDはアタリだった。買っても1回ないし2・3回聴いて終わり、というCDが多い中で、これはかなり繰返し聴いたな。アルゼンチン人の演奏は「そうそうタンゴはこうでなくちゃね」というもの。それに青木さんのピアノも良かったのである。品格を備えた適度なダイナミクスと歌心。オリジナルアレンジも良い。青木さんの師であるというニコラス・レデスマの曲も良いですな。「日本人初!エスクエラ・デ・タンゴのオーディション合格」というのがどれほどの「快挙」なのか全然ピンときてなかったのだけど、やはり現地の人と競争してその地位を勝ち取るのは凄いことなのだろう、と大いに納得。

で11日、南青山マンダラでの本格的なCD発売記念ライブにも行きたくなった。授業が終わった後、留学生との懇親会に顔を出したので遅くなってしまったが、なんとか2nd setには間に合う。共演は会田さんの他、東谷さん(b)、北村さん(bandneon)で、日本のタンゴ界から選りすぐりのメンバーと言っていいだろう。演奏は言わずもがなで、今度はPAもバッチリ(マンダラ系列はたいてい良い印象がある)。特にヴァイオリンの音は、PA次第でこうも違うものかと思ってしまう。

その次、17日はギター&ボーカルユニット「千の小鳥」が企画したジョイントライブ。対バンがERA(鬼怒無月g&壷井彰久vln)と、早川純タンゴトリオ(早川純/Bn、佐々木崇/Pf、田邊和弘/Cb)。全部興味のあるバンドだけど、特に喜多直毅+The Tangophobicsの準メンバーである早川さんのリーダートリオは楽しみだった。

これも期待以上。バンドネオン、ピアノ、コントラバスという編成はたぶん初めて聴いたけど、なかなかバランスが良い。3人とも超絶技巧と言っていいだろう。こういう最小編成だと、一人一人の存在感が際立って、大編成にはない面白さがある。リーダーの早川さんはもちろんだが、ベースの田邊さんも大迫力の演奏で、以前聴いたときより格段に良い印象。

青木さんと早川さんに共通しているのは、"伝統的なタンゴの語法"をしっかり踏まえた上に"オリジナルアレンジ"を展開しているということ。両者のバランスがとても心地よい。普段ジャズ系を中心に聴いている僕のような人間にも、「タンゴっていいじゃん!」と素直に思わせてくれる演奏である。

そしてこの日、20日は、実は最初別のコンサートに足を運んだ。招待制のコンサートで、応募したらあっさり当たったので。出演は過去にちゃんとチケットを買って聴いたこともある、かなり好きなバンド。しかし「タダ」というのが逆にちょっと引っかかっていた。ほとんどお客さんは大喜び。そりゃそうだ。本来4000円ぐらい払って聴く価値のある演奏をタダで聴いてんだもんね。さすがの演奏なのだけど、特に新鮮味があるわけではない。これって企画する側としたらどうなのさ、と思ってしまう。

誤解のないようにはっきり断っておくが、「新鮮味がない」のは過去に同じバンドの演奏を聴いているからであって、彼らの音楽性そのものはとてもユニークである。パフォーマンスとしても非の打ち所がない。他に聴きたいライブが無ければ、割り切って楽しめたと思う。

沸き返る客席の中で、「今自分が本当に聴きたい音楽は何だろう?」と自問自答。11日と17日の興奮を思い出す。そうだ、今日もinFでタンゴをやっている。しかも「オリジナル・アレンジによるタンゴ演奏」という意味では先輩格のエル・タンゴ・ビーボだ。「もし招待券が当たらなければあっちに行ってただろうな」という思いが頭をよぎる。時計に目をやり、まだ2nd setには間に合うことを確認すると、自然と足がinFに向かった。


つまりこういうことだ。

inFの水餃子は最高だと思う。そこには確かに水餃子でしか味わえない、水餃子ならではの味わいがあって、僕はまさにその「水餃子的なもの」に惹かれている。とはいえ僕は、特に水餃子にこだわっているわけではなくて、ただただ「本当においしいものが食べたい」のである。この日はそれがinFの水餃子だった。そして「inFの水餃子」ならではのオリジナリティというのも確実に存在し、中国や台湾に行ったところで、この味に出会えるわけではないだろう。水餃子は本場のものに限る、という固定観念に縛られている人はinFの水餃子を知らずに一生を終えるのかもしれないが、それはとても不幸なことだ。水餃子にとっても、その人にとっても。


おわかりと思うが、「水餃子」を アレ に置き換えても同じ命題が成り立つ。


アレというのはもちろん、


「生春巻き」である。

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Comments

うわぁ~立て続けにいいですね♪
しかも22日もいらっしゃるのですよね。
羨まし過ぎます。
そうなんです!TANGOってカッコイイです!
もっと多くの人にその素晴しさを知って聴いてもらいたいですよね。
先日久々にHYPERTANGOを聴きまくりましたが、改めてそのオリジナリティの凄さ斬新さを
思い知らされた、イエ再発見しました。(遅ればせながら)

Posted by: 理季 | 2005.05.21 at 12:20 AM

理季さんコメント早すぎ(笑)。本編もよろしくお願いします。
「HYPERTANGO」「HYPERTANGO II」を特に推したいのは山々ですが、シーン全体が面白くなりつつあると思います。

Posted by: tokunaga | 2005.05.21 at 01:02 PM

うわぁ~長い本編があったんですね!
し、失礼いたしました(汗)
イエイエtokunaga先生、これからもドンドン日本のタンゴシーンについて語って下さいまし。
今後若手の実力派タンゴミュージシャンが輩出していけば、新たな聴き手も取り込んで日本のタンゴシーンは益々進化発展して行く兆しが濃厚ですね。
それにしても毎週東京の何処かしらでタンゴの上質なライブが聴けるなんて数年前迄は考えられなかった様な気がします。

Posted by: 理季 | 2005.05.21 at 09:07 PM

トラックバックありがとうございました。こちらからも送らせていただきました。

Posted by: よしむら | 2005.05.26 at 02:49 AM

よしむらさんコメント&TBありがとうございます。「パリのカナロ」も聴きたかったなあ。

Posted by: tokunaga | 2005.05.26 at 10:31 AM

初めまして!うみと申します。
「タンゴ」をネット検索していたら、こちらに辿り着きました。
私はタンゴが大好きで、小松亮太のライブにはほぼ毎回出没しています。笑
小松亮太との絡みで、喜多さんや早川さんの演奏も耳にしていますよ。

いやいや。
私もタンゴを聴いているつもりでしたが、tokunagaさんのレポートを拝見して
とてもとても「タンゴを聴いている」なんて言えないな・・と思った次第です。
私はピアソラや小松亮太の演奏に偏りがちなので、
もっと視野を広げてみよう!と思いました。
レポを拝見して気になったのが「青木菜穂子」さん。
ぜひCDを聴ききたいです。
早速探そうっと・・

あ、理季さんだ。笑
うみです。
理季さんもタンゴの視野が広いですよね。
知識の豊富さにいつも感心しています!

Posted by: うみ | 2005.07.13 at 04:51 PM

うみさん始めまして。どこかの会場でニアミスしているかもしれませんね。タンゴに限らず一般論として、共演者に興味を持って徐々に幅を広げていくと次々に新しい世界が開けてくると思いますよ。
青木さんのCDはあまりお店には出ていないかもしれないのでビショップレコードのサイトで注文するのが確実だと思います。

Posted by: tokunaga | 2005.07.17 at 06:08 PM

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» 「Tierra Querida」CD発売記念コンサート [よしむらのページ]
ずいぶんと久しぶりにライブに行ってきた。演奏はピアニスト青木菜穂子の四重奏団。メンバーは会田桃子 (vn)、北村聡 (bn)、東谷健司 (cb) という強力布陣である。 [Read More]

Tracked on 2005.05.26 at 02:46 AM

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