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2005.11.18

ヤマンドゥ・コスタYamandu Costa(g)、チアゴ・エスピリート・サントThiago Espirito Santo(b) 、エドゥ・ヒベイロEdu Ribeiro(dr,perc)が生み出す究極のギター・ミュージックについて沈黙してるわけにはいかない

ハファエル・ハベーロが亡くなったのは何年前のことだろう?ともかく、この超絶7弦ギタリストの存在を知って興奮してから間もなく、彼は夭逝してしまった。

ショックだった。もうこんなすごいギタリストに出会えるチャンスは当分ないだろうと思った。

ところが。

ヤマンドゥ・コスタが彗星のように現れたのだ。
(続く)

続き。
アコーディオン奏者の佐藤芳明さんから「ヤマンドゥ・コスタという凄いギタリストがいる」というお話を伺って、さっそくCDを買い求めたのが昨年のこと。

ほう、こりゃすごい。まさしくハベーロの再来か!

でも正直に言えば、僕はやっぱりハベーロの方に思いいれがあった。晩年というにはあまりに若い、しかしすでに死を覚悟した(輸血によりHIV感染)30歳前後の演奏。最晩年のソロアルバムで、超絶テクを封印して切々と弾いたショーロのなんと味わい深いことよ。

対する天才少年ヤマンドゥは、テクニックこそハベーロ並みにすごいけどイマイチ洗練されてないかな、と。でもまだ20代前半だし、これから成熟していけば楽しみだなあ、なんてノンキに考えていた。

あまりに衝撃的なライブを目の当たりにしてしまった今となっては、まったく浅はかだったと言わざるを得ない。ハベーロも間違いなく天才ギタリストだったけど、ヤマンドゥ・コスタ(と彼のトリオ)の音楽はひょっとすると、ブラジル音楽、南米音楽といった枠を超えて世界の音楽シーンを震撼させる可能性を持っている。


なかなか本題のライブレポートに入れないけど、その前にもう一呼吸置かせてください。
続く

続き。
やっと落ち着いてきました。大事なことを伝えるときこそ、冷静にならなくてはいけない。「世界の音楽シーンを震撼させる」なんて、もちろんちょっと大げさすぎる。言いたかったのは、「○○音楽」といったジャンルの枠にとらわれて考えると本質を見誤るということだ。

そもそも、一体これのどこが「ブラジル音楽」なのだ?もちろんショーロやサンバのリズムは出てくるしジョビンをはじめブラジル人の曲をやっている。しかしそんなものは個々の「パーツ」に過ぎない。「曲」はあるのだが、一定の型というものが存在しないのだ。アレンジもユニークだし、曲の途中で(おそらく)即興的にどんどん変化しながら展開する。全部即興か?と思っているとものすごいキメが。

その自由さこそ、ヨーロッパやアフリカの要素を吸収しつつ発展した南米音楽の本質なのだ、と言ってしまえばその通りなのかもしれない。ライブを聴きながら連想したのはエグベルト・ジスモンチである。アカデミックな音楽教育をまったく受けていないヤマンドゥ・コスタの演奏にはジスモンチほどの構築感はないのだけど、この複雑さはどうだ。決して感性だけに頼って組み立てているわけでないだろう。

ああそういえば、ジスモンチの生演奏を始めて目の当たりにしたときも、こんな風に興奮しっ放しだったっけ。

そして。

もうひとつ、強調しておきたいことがある。

ヤマンドゥの演奏にもびっくりしたけど、彼が(予想以上のレベルだったとはいえ)天才なのはわかっていた。ある意味さらに衝撃的だったのはチアゴ・エスピリート・サントThiago Espirito Santoのベースである。

ほとんどの「天才」は、そのあまりの能力ゆえに、周囲の人間と釣り合わないという悩みを抱えている。同じ南米の天才ギタリスト、フアンホ・ドミンゲスのバンドの彼以外のメンバーが誰かなんて、誰も気にしちゃいないだろう(ただしフアンホ自身は仲間をとても大切にしていて、「このメンバーでやることが重要だ」と言っていたけど)。

だが驚くべきことに、ヤマンドゥ・コスタ・トリオは彼一人のバンドではない。チアゴはヤマンドゥと完全に対等に渡り合う。「サポート」という印象を与えないのだ。テクニック的にはジャコ・パストリアス的な和音使いのセンスに加え、スラッピングの語法も多彩。現代的なエレクトリック・ベース奏法のすべてをマスターしている。ヤマンドゥが暴れだせば、すぐさま反応して追随。ヤマンドゥのオフィシャルサイトで「タキート・ミリタール」の高速ユニゾンが見られるけど、あんなの序の口ですよ。

実はチアゴとは開演前に少し話すことができた。英語も達者で、知性的でシャイな雰囲気を漂わせる好青年。いかにも怪物然としたヤマンドゥ(ちなみに英語はまったく通じず)と対照的だ。ライブでの超絶演奏とのギャップがすごい。終演後サインをもらうときに「君らみんなgeniusだよ!」といったら本当に嬉しそうな顔をしていた。誰でもそう思うってば!

ヤマンドゥとチアゴのコンビネーションが生む相乗効果、強烈なグルーヴ。これは長年音楽を聴いていても初めて体験するものだった。もちろんそれをしっかりフォローするエドゥ・ヒベイロEdu Ribeiroのドラムも素晴らしく、トリオとしての一体感も最高。でもすみません、ヤマンドゥ&チアゴがあまりに強烈だったので、相対的に「普通の人」に見えてしまいました。ちなみにこの人も大物ミュージシャンから引っ張りだこの、超売れっ子「若手」(30歳くらい)ドラマーらしいのだけど・・・

ヤマンドゥとチアゴはまだ20代半ば。まったく、とんでもない才能が次々に現れるものだ。


こういうことがあるから、「昔は良かった」なんてしたり顔で話す年寄りは絶対に信じてはいけない。21世紀はきっと、もっと面白くなる。国際情勢や自然環境は心配だけど、音楽だけは。

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Comments

お久し振りです。
ヤマンドゥ凄そうですね~
…早く続きが読みたいです。

Posted by: k_17g | 2005.11.22 at 08:14 PM

おそまつさまです。やっとなんとか。 k_17gさんのブログも相変わらずよく参考にさせてもらってますよ。音楽的な興味はかなり被ってるんですが、微妙にアンテナの方向が違ってるのが面白いですね。ヤマンドゥ・コスタは今回の好評を受けて再来日が計画されるようですので、次回はお見逃し無く。

Posted by: tokunaga | 2005.11.23 at 11:12 AM

読み応えのある記事をありがとうございます!
ますます興味がわいてきました。

こちらこそtokunaga様の記事をよく参考にさせてもらってます。
一歩先に踏み出す鍵が隠されているような気がしてならないのです。

Posted by: k_17g | 2005.11.26 at 09:50 PM

●tokunagaさん、こんにちは。
パウロ・モウラ (Paulo Moura)
http://music-review.info/article/10709533.html
へのコメントありがとうございました。

>ヤマンドゥ・コスタとのデュオ
「El Negro del Blanco」の事ですね。超絶技巧の二人が競合するエネルギッシュな、それでいてヤマンドゥ・コスタのちょっと押さえ気味のところがおかしくもある、ユニークな作品ですよね。大好きな作品の一つです。ここ最近は著名人の来日が相次ぐもなかなかライブに行くことが出来ませんでした。先日のヤマンドゥー・コスタ来日も同様に行くことが出来ず、無念の歯噛みを繰り返していますw特にヤマンドゥー・コスタのトリオはベースのチアゴ・エスピリト・サントスの演奏がヤマンドゥ以上に好きなので、是非次回の来日は足を運ぶことが出来るよう気長に待つ予定ですw

Posted by: ponty | 2005.12.19 at 08:31 AM

ponty様
コメントありがとうございます。そう、パウロ・モウラ&ヤマンドゥ・コスタはそれですね。トリオのCDを聴いてチアゴのベースに注目するとはさすがですね!彼もすごい才能だと思います。ライブDVD「Ao Vivo」(CDと同タイトルですがもちろん別内容)もそろそろ手に入るかもしれませんので検索してみてください。

Posted by: tokunaga | 2005.12.19 at 08:47 PM

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Posted by: methode lafay gratuit | 2014.10.05 at 09:11 AM

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