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2005.12.29

2005年の締めくくりに相応しい名演だった大萩康司と松尾俊介のブローウェル

12月29日、六本木スウィートベイジル139で定例の大萩康司(g)コンサート。今回はパリ・コンセルヴァトワールの後輩、松尾俊介(g)がゲスト。

スウィートベイジル139は以前から様々なジャンルの音楽を扱っておりクラシックも例外ではないけれど、大萩さんのように定期的(ほぼ半年に一度)に公演しているケースは珍しいだろう。

ライブハウスでのクラシック演奏についてはデメリットもないわけではないけれど(この日も途中で原因不明の不快なノイズが!)、リスナー側の選択肢が増えるのだから基本的に歓迎すべきだ。平日午後8時開演、というだけでも相当ありがたい。この日は年末だしたまたま僕は早く来られたけど、普通に仕事してたら「7時開演」に間に合うのは相当キツイでしょう?まあ1時間開演を遅らせるくらい、ライブハウスでなくても工夫次第で可能と思うけど・・・

「何でもアリ」な雰囲気を醸し出すのもライブハウスのいいところだけど、それにしてもこの日はかなり掟破り。2重奏をするために同業者をゲストに招くのは珍しいことではない。しかし驚いたことにこの日は、ゲストの松尾俊介さんに対してソロコーナーまで用意したのだ。

たとえば歳の離れた後輩に、先輩として花を持たせるってのならわかる。しかし松尾さんは大萩さんのわずか一歳下で、同世代のライバルと目されて然るべき存在。しかも、その実力がハンパじゃない。並のギタリストなら、

まともに勝負するのはヤバイ!

ぐらいのことは考えても不思議じゃないところだ。天然キャラの大萩さんにそういう計算が働かないのは想像がつくけど(笑)、ビクターは相当な太っ腹だな、というのがまず思ったこと。

松尾さんも松尾さんだよ。せっかくもらったソロコーナーで弾いた曲がブローウェルの「タラントス」。バリバリの現代作品である。甘い旋律で(おそらく会場の9割以上を占める)若い女性客のハートをゲット!とか考えなかったのか?いや愉快愉快。ワイン飲みながら、こんな極上の「タラントス」が聴けるとは思わなかったなあ。

でもって表題の「ミクロ・ピエサス」。これまでにアサド兄弟を含め数多くの名手達のデュオで聴いてきたけど、その中でも最上級の演奏であったと断言できる。デュオというのは個々の実力が優れているからといってうまくいくとは限らず、だからこそ面白い。大萩さんと松尾さんは、特にタイプが似ているというわけではないのだけど、音楽的に深い部分で共鳴しているのだろうな。二人の「イメージ」がぴったり合致して、それを実現するためのテクニックと音楽性を双方が満たしていて・・・

大萩さんの演奏については過去に繰り返し言及してきた(これとかこれとか最近のこれとか)から、今回はいいでしょ。どっちがどう、ってわけじゃなくて、2つの才能が織り成す調和と緊張感の絶妙なバランス。これに尽きるのでした。

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2005.12.26

おそらく人生で3番目くらいに刺激的なクリスマス3連休の記録(自転車キンクリートstore「セパレート・テーブルズ」、koolhaus of Jazz III、UA)

ちなみに「1番目」は数年前のきわめて個人的な体験。「2番目」は未来のために空けておきます。

12月23日
劇団「燐光群」主宰で劇作家・演出家の坂手洋二さんが俳優として出演するというので話題の芝居、「セパレート・テーブルズ」(テレンス・ラティガン作/マキノノゾミ演出)の上演がこの日までだった。これを見逃すわけにはいかない。新宿スペースゼロへ。当日券5000円のところ、同シリーズの「ウィンズロウ・ボーイ」(ラティガン作/坂手洋二演出)の半券提示で500円引き。「ラティガン祭り」の残り一つ「ブラウニング・バージョン」も見ていれば1000円引きになるところだった。粋なシステムだなあ。

坂手さんは前半しか出ない、という話を伺っていたのだけど、実はこの芝居、前半と後半がほぼ独立したストーリーになっていた。そして坂手さんは言わば前半の主役。屈折した恋愛感情を表現しなければならない難しい役どころながら、堂々たる演技。いかにもキレ者という風貌も役にぴったり。これがきっかけで「俳優・坂手洋二」に対して出演オファーが殺到したら創作活動に支障が出ちゃうんじゃないか、と余計な心配までしてしまった。

後半は山田まりあが素晴らしい。精神的な問題を抱えた女性の役で、やはりかなりの演技力が要求されるはず。グラビアアイドル、バラエティタレントのイメージを快く裏切られる。タダ者ではなかったんだなあ。ファンになりそう。

内容については検索して他のレビューをあたってください。舞台は1950年代?あたりのイギリスだけど扱っているテーマは普遍的で、心にずしりと響く内容。スタイルとしては「ウェルメイド」になるのだろうか。でもそんな言葉で簡単に分類してしまうのは気が引けるような、中身の濃い舞台。そして休憩を挟んで3時間を悠に超える長丁場。しかもまったく飽きない。前半・後半それぞれが1本分くらいのボリュームがあるので、2本立てと考えると1本あたりのコストパフォーマンスは非常に高いことになる。他の娯楽とも十分張り合える値段で、かつ誰でも楽しめる内容なのだ。その辺はもっと強調されていいと思うんだけど。


12月24日
浅草アサヒアートスクエアのカルメン・マキ+鬼怒無月(ゲスト:喜多直毅、佐藤芳明)にも強力に惹かれつつ、恵比寿リキッドルームの「koolhaus of Jazz III」へ。さまざまなスタイルを持つ7人の歌手が芳垣安洋(ds)をリーダーとするスペシャルバンドをバックにスタンダード歌うというクリスマス特別企画。歌手のみなさんも皆個性的で素晴らしいのだけど、僕の最大の関心はギタリスト内橋和久さんがスタンダードでどんな演奏を聴かせてくれるのか、という点にあった。内橋さん率いる即興ジャズロックトリオ(すごく適当に言ってます)、アルタードステイツも1枚だけスタンダード集を出しているけど、これはフリージャズ的なアプローチ。歌モノのスタンダードをまとめて演奏する機会なんて滅多にあるもんじゃない。開演前からワクワク。

そしてたしか2曲目くらいだったか。内橋さんのギターソロの最初のフレーズが耳に突き刺さった瞬間、上半身のみぞおちあたりから上全体がカーッと熱くなるのを感じる。

かっこよすぎますよ内橋さん。やっぱビル・フリゼル超えてますね!!いやわかってましたけど!

というのはそのとき湧き上がった感情をできるだけ忠実に描写しようとした結果なので、フリゼル・ファンの皆さん怒らないでね。ていうか僕もフリゼル大好きですよ。そしておそらく内橋さんも。

内橋さんが80年代あたりまでのフリゼルに影響を受けているのはインタビューなどからも間違いない。しかしその後内橋さんが到達したスタイルは極めてユニークで、掃いて捨てるほどいるフリゼルのfollower達とは明らかに一線を画しているのだ。だから内橋さんがこの日のように「フリゼル風」と形容したくなるようなサウンドを聴かせるのは逆に珍しく、フリゼルも好きな内橋ファンである僕にとって、言わばクリスマスプレゼントみたいなもの。脳に染み入るように心地よいギターの音色とフレーズを存分に堪能した。

歌手の中でもっとも印象に残ったのは松田美緒さん。ポルトガルのファドに影響を受けた歌手と聞いているけど、同じポルトガル語のブラジルものも得意。なにせネイティヴみたいに喋れるのだ。実は松田さん、先月のヤマンドゥ・コスタ来日公演にもゲスト出演されており、流暢なポルトガル語でメンバーとコミュニケーションを取っていた。バックステージで会っていたらスタッフの日系ブラジル人と間違えてたりして。あのときはヤマンドゥ・コスタの衝撃があまりに大きかったのでつい触れそびれてしまったけれど、今回あらためてじっくり聴くことができて、豊かな声量と日本人離れした歌いっぷりを再認識。

別の意味でインパクトが大きかった「歌手」は菊地成孔さん。「ロシア系ユダヤ人」になり切った?MCが爆笑もの。歌ははっきり言って下手。しかしそれを逆手に取っている。クリスマスソングに加えて松田聖子の「スウィートメモリーズ」までカバーしていたけれど、リハーサルで「もっと地獄のように」と指示したというバックのサウンドと下手糞な歌とのマッチングが最高。最上級の敬意を込めて「史上最悪のスウィートメモリーズ」と評したい。


12月25日
またしてもリキッドルームで、雑誌SWITCH主催による招待制のUAライブ。気付いたときには応募が締め切られており地団太を踏んでいたところに「拾う神」が!(抽選に漏れた方に申し訳なくて詳細は書けません) バンマスは内橋さんである。僕にとって本当に嬉しい「内橋2days」となった。

やはり内橋さんがアレンジとバンマスを勤めた夏の野音とよく似た編成(eijiさんのblog参照)。野音との大きな違いはまず音響だ。この日、予想外に音量が小さいのが新鮮だった。もちろん他のロック系のライブなどと比較して、という意味であって聞こえにくいわけではない。むしろ細かいアンサンブルが聞き取りやすく、冴えわたるアレンジの妙が実感できる。UAの声も、うっとりするほど自然な艶やかさで響き渡った。

J-POPのもっとも進化した形がここにある。ビヨークっぽく聞こえるところがあるって?僕はそうは思わないけど、百歩譲ってそうだとしよう。そこにはある種の必然がある。なにしろ内橋さんは、ビヨークの重要なサポートメンバーであるジーナ・パーキンスらと96年にポップスユニット「KAN-PAS NEL-LA(カンパネルラ)」を結成しCDも発表しているのだ。内橋さんもビヨークぐらい聴いているだろうけど、きっとビヨークもジーナ・パーキンス経由で内橋さんの影響を受けているはず。

という仮説は、果たして大胆すぎるだろうか?

真偽はどうでもいい。でも「そんなことはあり得ない」と決めてかかるのは、単なる洋楽コンプレックスじゃないのかな。

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2005.12.21

小沼ようすけアコースティックトリオ+喜多直毅というジャズシーン最前線

20日、モーションブルーヨコハマ。

パーカッションが仙道さおりさん。小沼さんとの共演も回数を重ねてきて、相性は抜群。小沼さんの新譜にも数曲参加しているらしい。すごく楽しみ。ベース工藤精さん。名前は良く見るけど演奏を聴くのは初めて。。。か?プロフィールによれば広木光一さんのバンドにいたらしいから見てる可能性あるな。鳥越啓介さんもそうだった。広木バンド、なにげに優秀な若手を輩出してるなあ。小沼さんとの共演は久しぶりのようだけど、「修行時代」に一緒に揉まれた仲らしい。スペシャルゲストの喜多直毅さん(vln)も含め、全員が30代前半だ。

喜多さんが加わっての1曲目は「板橋区」。いきなり喜多さん全開。眩暈がした。つまり絶好調ということなのだが。徐々に盛り上げようとかいう気配りは一切ないのだな。まあ自分の曲だと張り切るのは仕方ないか。次はハンコックの「Tell Me a Bedtime Story」。ロマンチックな曲だよねえ。テーマの艶っぽいメロディをまた喜多さんがいやらしく弾くんだ。だが喜多さん、ソロになると再び全開。「あ、小沼さんモーションブルーでバイオリンとやるのね、なんかステキ!」と期待してやってきた女の子を和ませようとかいう気配りは一切ないのだな。いや僕個人はそんなこと期待してないからいいんだけど。いいんだけど。。。

いったいこの先どんな展開になってしまうのか。ちょっとハラハラしつつ迎えた2部のアタマ、小沼&喜多デュオの「Over the Rainbow」が絶品。やられた。4月7日六本木STB139(デュージャン・ボグダノビッチ来日記念セッション)の再現、いやそれ以上かもしれない。2005年に世界中で演奏された「Over the Rainbow」の中で5本の指には入るな。4月7日もそう思ったんだけども。

次が小沼&仙道デュオによる「シシー・ストラット」。ギター&カホンでファンク、というアイディアの素晴らしさ。二人の個性とイマジネーションが爆発している。これも間違いなく、世界中でこのデュオにしかできない「シシー・ストラット」なのだ。小沼さんはおそらくジョンスコやチャーリー・ハンターの影響を受けているだろうが、そのいずれにもまったく似ていない。

それからまた喜多さんのオリジナルで「夢」。小沼さんが「ジャズミュージシャンでは思いつかないような曲」と紹介する通り、ノリはいいんだけど一風変わっている。当然喜多さんは飛ばすが、今度は小沼さんもソロで逆襲。ディストーションを効かせた唸るような低音フレーズがかっこいい。喜多さんの弾きまくりに対して、音数で対抗しようとしないセンスはさすが、というか大人だなあ。

ラストはおなじみの「ウィンドジャマー」で盛り上がる。アンコールはフリーな即興から曲に繋がる流れが見事。普段の小沼さんのライブではなかなか見られない展開だけど、こういうのも余裕で出来ちゃうんだよなあ(当然か)。

喜多さんに圧倒され、小沼さんの懐の深さに痺れたライブでした。

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2005.12.20

現代ギター2006年1月号ヤマンドゥ・コスタYamandu Costaインタビュー記事への補足

まず前文の日本語が変ですが、これは校正ミスによるものです。簡単に言うと「です・ます」調でほぼ統一した原稿(オリジナルはこちら)とそうでない原稿の2通りがあって、2つが組み合わさってしまいました。こんな文章平気で書くやつと思われたらライターの仕事が来なくなる、という以前に普段学生のレポートなど指導している立場からも非常にまずいです(笑)。あってはいけないことですが、今回緊急取材した関係で入稿が非常に慌しかったので、と言い訳しておきます。中原仁さんのblogでもコメントいただいちゃったし、たぶん業界的にも注目度の高い記事だから焦りました^^;)

内容に関しては、スケジュールの都合上、ライブ本番を見る前のインタビューだったことが残念。リハーサルだけでも鳥肌モノでしたが、ライブで衝撃を受けた後だったらもっと別の質問ができたかも。いや興奮し過ぎて、かえってわけがわからなくなっていた可能性もありますが・・・

写真も僕が自分のデジカメで撮ったものなので、お粗末さまです・・・にしてはまあまあかな?背景が美しくないのと、ストロボが自動発光して指板が光っているのがいかにも素人臭いですね。しかし何より、ちょっとふてぶてしい感じに写ってしまって、いかにもラテン的な明るさを持った「やんちゃな25歳の青年」の雰囲気が出せなかったのが残念。強行スケジュールの終盤でお疲れだったこともあるけど、「Smile!」ぐらい言えばよかった(英語は通じなかったけどそれぐらいわかるだろうから)。

でも右側のギターを弾いてる写真はいい感じ・・・と自画自賛。一生の記念だなあ。

考えてもみてください。バーデン・パウエルやパコ・デ・ルシアが初来日したときの楽屋でのショット、なんて持ってたらすごいでしょ?僕は彼が単なる「早熟の天才」だとはどうしても思えない。20年後に自慢する自分が想像できます。(やなオヤジ・・・)

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2005.12.19

平成17年度「現代パフォーミングアーツ入門」第10回(12月19日)~World Music

いわゆるワールドミュージック系。

[DVD]Peter Gabriel「Secret World Live」より「Come Talk To Me」「Across the River~Shaking the Tree」
*92年のライブ。シャンカール(vln)参加。「動くシャンカール」が観られる市販ビデオってこれぐらい?
*「Shaking the Tree」はセネガル人歌手ユッスー・ンドゥールとのコラボレーションにより生まれた作品。

[DVD]ユッスー・ンドゥール「The la Rochelle Francololies Festival」より「Shaking the Tree」
*たぶん1995年くらいのライブ。ユッスーの声とダンス、かっこいいですね。

[CD]梅津和時シャクシャイン「Desert in a Hand」より「Belfast」
*第8回のときサックス6重奏団The Six Windsの演奏で紹介したもののオリジナルヴァージョン。ややこじつけですがアイリッシュ風味ということで。
*97年にアメリカのKnitting Factory Recordsより発売。

[CD]Egbelt Gismonti「Alma」より「Baiao Malandro」「Palhaco」
*ブラジルの天才的な作曲家/ピアニスト/ギタリストによるピアノソロ作品集(一部シンセやチェロ等をオーバーダビング)。
*以下受講生向けというよりマニア向けの解説:「Palhaco」(パリャーソ)はヤン・ガルバレク(sax)、チャーリー・ヘイデン(b)と共演した「Magico」(ECM)での演奏が有名かもしれませんが、「Alma」のピアノソロヴァージョンも非常に美しいです。ていうか、僕はこっちの方が断然好き。ちなみに授業で流したのはオリジナルのブラジルEMI盤。現在手に入りやすいCarmo盤も持っていますが、こちらはライブ音源が追加された代わりにスタジオ音源が1曲削られ、何故か音質が劣化しています。EMI盤は異様に音色がクリアで、Carmo盤を聴いたとき「あれ?なんか音がこもってる」とすぐ違いに気付いたほど。さらによく聴くと一部音が歪んでおり、これは比較しなくても単独でわかると思います。このページには「録音が悪い」とありますが、違うんですよ・・・なんでこんなことが起こるんでしょうねえ。このアルバムは本当に大好きなので語り出すと長いのですが、ともかくオリジナル盤を買うとき「これはプログレっぽいですよ」と大ウソを言って(笑・他のアルバムと間違えたんでしょうね)勧めてくれた今はなき渋谷WAVEの店員さん、あなたに感謝します!!
*さらにマニア向け追記:検索して気付いたのですがブラジルEMIからベスト盤が出てました!これはチェックする必要がありそうです。

[DVD]アストル・ピアソラ「ライブ1984」より「AA印の悲しみ」のバンドネオンソロ、「アディオス・ノニーノ」(以上3限のみ)
*モントリオールジャズフェスティバルでのライブ。

[DVD]アストル・ピアソラ「Five Tangos」より「アディオス・ノニーノ」(5限のみ)
*1981年、ドイツでのスタジオライブ。
*5限は敢えて同じ曲の別ヴァージョンにしてみました。久々にじっくり観ましたが、モントリオールよりこちらの方が音質・演奏の完成度の両面で優れているようですね(メンバーはまったく同じ)。モントリオールもライブならではの勢いがあって悪くないと思いますが。

[CD]小松亮太「タンゴローグ」より「プレパレンセ」
*2004年発売のアルバム。ピアソラの初期の作品を喜多直毅(vln)が編曲。

[CD]小松亮太「バンドネオン・ダイアリー」より「リベルタンゴ」
*若手実力派ピアニスト林正樹(pf)が編曲。喜多直毅参加。

[DVD]アストル・ピアソラ「ユレヒト1984」より「ミケランジェロ70」「天使のミロンガ」
*こちらもメンバーは同じ。なぜか映像作品はこの時期(80年代前半)に集中してますね。フェルナンド・スアレスパスのヴァイオリン、やっぱりいいなー。タンゴ独特の奏法にも注目を。

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ライブ・公演情報(2005年12月下旬~2006年1月前半)

12月19日
■ラクダカルテット@新宿ピットイン
*元ティポグラフィカ、水上聡(key)さんのちょっとイカれた素敵なバンド。
■SOH BAND@吉祥寺マンダラ2
*田中邦和(ts)参加。

12月20日
■小沼ようすけ(g)、工藤 精(b)、仙道さおり(per)+ゲスト:喜多直毅(vln)@モーションブルーヨコハマ
*小沼さんと喜多さん久々の共演。

12月22日
■DATE COURCE PENTAGON ROYAL GARDEN@恵比寿みるく
*みるくぐらいのキャパじゃギュウギュウだろうなあ・・・
■林栄一sax、内橋和久g、外山明ds@西荻窪・音や金時

12月24日
■カルメン・マキ+鬼怒無月 ゲスト:喜多直毅vln、佐藤芳明acc@浅草・アサヒアートスクエア
■新大久保ジェントルメン+おおたか静流vo@新宿ピットイン
■芳垣安洋dsスペシャルバンド(内橋和久g、鈴木正人b、高良久美子vib、塩谷博之sax、青木タイセイtb)ゲスト:オオヤユウスケ(Polaris)、高田みち子、土岐麻子、松田美緒、他@恵比寿リキッドルーム
*今年のクリスマスイヴは凄いですね。。。どれに行くべきか迷うところ。

12月26日
■eEYO idiot(イーヨvo、内橋和久g、中原信雄b、外山明ds)@吉祥寺マンダラ2

1月6日
■中川昌三(Fl)、林正樹(pf)@大塚グレコ


1月7日
The Shape of Fiddle to Come@三軒茶屋グレープフルーツムーン

*出演:Arabindia(常味裕司:oud、吉見征樹:tabla、太田惠資:vln)、喜多直毅vln・津山知子pf Duo、Johnson's Motorcar(Jim Ediger:fdl、Martin Johnson:fdl)
*アラブ、タンゴ、アイリッシュという3種類のヴァイオリン(フィドル)が一度に味わえる注目企画。ヴァイオリンファン必見。

1月9日
■『トリアングロ』啼鵬(バンドネオン)相川麻里子(vn)高田元太郎(g)@大泉学園inF
■DATE COURCE PENTAGON ROYAL GARDEN、L?K?O、大友良英、SKE@渋谷O-EAST

1月12日
■小沼ようすけ(g).鳥越啓介(wb).仙道さおり(per) @吉祥寺strings

1月13日
■小沼ようすけソロ@吉祥寺strings

1月14日(土)~ 25日(水)
■燐光群「スタッフ・ハプンズ@下北沢ザ・スズナリ  

1月15日
■喜多直毅vln、黒田京子p、佐藤芳明acc、CHRISTOPHER HARDY perc@下北沢レディジェーン

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2005.12.18

素敵な週末の記録

17日
アサヒビールKM(小学校の同級生!)から突然電話があり駒場アゴラの森下真樹ダンスショウ(白井剛他出演)に誘われる。若手実力者による笑えるダンスパフォーマンス→そのままKMと白寿ホールの鈴木大介ギターエラボレーションへ。実はKMは鈴木大介さんが出演するコンサートに企画スタッフとして関わっていたことがあり、その縁で数年前に僕と20年ぶり(!)の再会を果たしたのである。コンサートは本編の力演に加えアンコールが絶好調→終演後、居酒屋「もも家」へ。もつ鍋が絶品!

18日
現代ギター社でギタリスト有田純弘さんにインタビュー。マニアックなギターねたでめちゃ盛り上がる。有田さん熱い!こういうインタビューは本当に楽しい(でも原稿をまとめるのは大変・・・)→駒場東大前orchard bar3周年記念パーティでDJデビュー。以下曲目リスト。

リー・リトナー「Feel the night」
渡辺香津美「風連」「Voyage」
El Negro and Roby「Gimme The Drum」
Jagga Jazzist「animal chin」
Buffalo Daughter「Volcanic Girl」
CIBO MATTO「Working For Vacation」
Bill Frisell「Chain of Fools」
char「smoky」(謎のリミックスヴァージョン)
渡辺香津美「All Beets Are Coming」

多くは授業で取り上げたことがあるもの。順序は途中からよく覚えてないので適当。いずれにしても脈絡ねーな。。。

→六本木スーパーデラックスでKUALA MUTE GEEK vol.4。出演 : 内橋和久+Hans Reichel, Carl Stone, opitope。オーガナイズしたopitopeのメンバー、畠山地平さんが誘ってくださったのだが、この豪華メンツなら誘われなくても行きますよ!世にも珍しい創作楽器ダクソフォンのデュオ、最後の全員セッションなど聴き所満載。

内橋さんが演奏を始めると愛娘かのんちゃん(7歳)が踊りだした。思わず見とれる。なんて素敵なダンスだろう。3年前の夏、犬島(岡山県)の維新派公演で会った彼女はまだ歩けなくて、ベビーカーの中で微笑んでいた。でもそんなことを知らなくても、十分感動的なシーンだったと思う。子供はみんな天才、というのはたぶん本当だ。作為にまみれた大人たちはどうやったら彼女・彼らに対抗できるのか。

演奏を終えたパパに向かって、かのんちゃん一言。

「よくがんばった!」


やはり勝てません。

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2005.12.16

12月17日(土)、白寿ホールの鈴木大介「ギター・エラボレーション」はいよいよクライマックスへ

10日の大萩康司&趙静デュオコンサートについて、思わず「最優秀企画賞」と書いちゃったけど、それは「A席学割1000円」という価格設定のほかに、ギターとチェロという魅力的な2つの楽器の組合せであったことが大きい。

もし「ギター」に比重を置くなら、鈴木大介さんのこの壮大な企画は文句なく最高に画期的なものである。3ヶ月ごとに全8回、足掛け3年のコンサートシリーズ。曲目構成もなかなか絶妙。各回ごとに明確なコンセプトを持ちながら、単独でもバランスの取れたプログラムになっており、どれに行っても1つのリサイタルとして楽しむことができる。

前回も素晴らしかったけど、今回も美しいプログラムですよ。

バッハ : 組曲 BWV1012
ヴィラ=ロボス : 12のエチュード
ピアソラ : 5つの小品 /他

だって。

BWV1012は無伴奏チェロ組曲第6番です。個人的にバッハの全無伴奏作品の中で一番好き。でもチェロの曲じゃん、と思われるかもしれないけれど、この曲に関しては「オリジナル主義」に固執するのはやめた方がいい。やや挑発的な言い方をすれば、チェロ版しか聴いたことがない人は、この曲の隠された魅力にまだ気付いていないかもしれない、とすら思う。

僕は先に優れたギタリストの演奏で聴いてしまったから、その後チェロによる演奏を聴いても「そこもっと軽やかに弾む(はずむ)ように弾いて欲しいのに!」「その重音もっときれいにハモって欲しいのに!」などと注文を付けたくなってしまう。それは演奏者の能力の問題ではなくて、楽器の特性上仕方ないのだが。

ウソだと思ったら、週末は富ヶ谷(最寄り駅は千代田線「代々木公園」または小田急線「代々木八幡」)の白寿ホールへ。6時開演です。チケットは2000円、3000円、4000円の3種類。

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2005.12.15

閃いた

喜多さんの新譜(produced by俺)のタイトル。彼の何気ない一言から。

「HYPERTANGO」よりかっこいいです(笑)。つーか、あのセンスどーなのよ、と今だに思うけど(けっこうギリギリまで「他にいいのないか?」と考えてた)。今度は割と自信あるぞ。「問題作」に相応しい。

いいタイトルを思いつくと、もうそれだけで名盤が出来たような気がするから不思議だ。でもまだ秘密です。

こういう独り言みたいなのは後で削除するかもしれないので、コメント、トラックバックは受け付けないようにしておきます。

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2005.12.13

平成17年度「現代パフォーミングアーツ入門」第9回(12月12日)~ジャズのいろいろな形3

なんかダラダラと続けちゃってます。成り行き上、ヴァイオリン&アコースティックギターの組合せが多くなりました。

[DVD]ビレリ・ラグレーン他「BIRELI LAGRENE & FRIENDS」よりGIPSY PROJECTの演奏(冒頭部分)、「Tears」(★3限のみ)、「Waltz for Nicky」(★5限のみ)、「Night and Day」(▲)、「Made in France」(▲5限のみ)
*ジプシー系ギタリスト、ラグレーンを中心とするセッション。2004年発売。ゲストにアコーディオン奏者Richard Galliano(★)とギタリストSylvain Luc(▲)
*Sylvain Lucは指弾きとピック弾きのどちらも巧い。
*なにげにヴァイオリンのMartin Weissというおっさんもタダモノではないですね。

[CD]Sylvain Luc & Bireli Lagrene「Duet」より「Time After Time」(3限のみ)、「Isn't She Lovely?」(5限のみ)
*シルヴァン・リュックが日本に紹介されるきっかけとなった99年のアルバム。

[DVD]「Super Guitar Trio & Friends」より「Spain」(3限のみ)、「No Mystery」(5限のみ)
*70年代に活動したスーパーギタートリオ(ジョン・マクラフリン、パコ・デ・ルシア、ラリー・コリエルorアル・ディメオラ)の80年代版?で、コリエル、ディメオラ、ラグレーンという組合せ。1990年発売。
*「Spain」「No Mystery」はいずれもピアニスト、チック・コリアの作品。ギターでよく演奏される。

[CD-R]小沼ようすけ「オレオ」、小沼ようすけ&喜多直毅「Over The Rainbow」
*2005年4月7日、六本木スウィートベイジルにおけるライブ録音。
*プライベート録音ですが、スタッフにお願いして録音していただいたもので、隠し録りではありませんので誤解なきよう。
*オレオも超絶技巧ですが、「Over~」はリハーサル無しのぶっつけ本番だそうです。Unbelievable! こういう録音が世に出せないのは残念ですが、たまたま録音していたのはラッキーでした。
*20日の小沼ようすけ with friends@モーションブルーヨコハマは喜多さんがゲストです。

[CD]シャクティのベスト盤より「Face to Face」「Happiness is Being Together」
*ジョン・マクラフリン(g)による1970年代のインド音楽プロジェクト。
*タブラ奏者ザキール・フセイン、ヴァイオリン奏者シャンカールらが参加。シャンカールのソロもあらためて聴くとすごいですね。

[DVD]ジョナス・エルボーグ(b)、ショーン・レーン(g)他「PARIS」より(3限のみ)
*2002年発売。ショーン・レーンShawn Laneは2003年に亡くなったので貴重な最晩年の映像ということになる。
*インド人ミュージシャン(パーカッション&ボイス)とのセッション。シャクティよりインド寄り?エルボーグは一時期マクラフリンと活動していたので、その影響もあるかも。

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2005.12.12

大萩康司&趙静デュオという最高のクリスマス・ギフトを低価格で提供してくださった和光市民文化センターには本年度の首都圏クラシックコンサート最優秀企画賞を差し上げたい

12月10日、和光市民文化センター大ホールにて大萩康司(g)&趙静(vc)リサイタル。

地方公共団体が主催するコンサートにはリーズナブルなものが多いので、要チェックである。地方といっても東京の市部(三鷹市、武蔵野市etc)や埼玉・神奈川・千葉あたりは都心からもすぐだし。この日の和光市も池袋から20分弱。市谷・飯田橋から東京メトロ有楽町線直通で30分ほどである。

リーズナブルといっても通常3000円ぐらいなのだけど、この日はS席3000円に加えてA席2000円の設定あり。しかも学生は各1000円引きだという。てことはA席は1000円!?これは破格でしょう。A席といっても最後部にオマケようにくっついているのではなくて、後方1/3くらい丸々A席。僕もA席の前の方で見たのだけど(当日券で余裕で取れた!)、音響も良くステージとの距離もほどほどで鑑賞にはまったく問題なし。

で、出演が大萩康司(g)&趙静(vc)ですよ。年に何回もない、「行かなきゃ損」というコンサート。プログラムは大萩さんご本人のblogを。バロック・古典から現代までの名曲がズラリ。「捨て曲」(と言ったら失礼なのだけど、オマケみたいに入ってる曲ということ)一切なし、全部聴きドコロ。

13日の東京公演はS席¥7,000/A席¥5,000だけど、この出演者・内容なら東京の相場を考えれば妥当でしょう。それだけの価値のあるものを、数分の一の価格で提供していただいたということ。CD発売記念ツアーだから独自企画というわけではないけれど、これをセレクトした担当者のセンスは賞賛に値しますよ。
(続く)

続き。
趙静さんはこのほど、世界屈指のレベルと言われるミュンヘン国際コンクールで優勝したのだけど、コンサートスケジュールが決まったのはそれよりずっと前だったはずですからね。

とはいえ、演奏の良し悪しは蓋を開けてみないとわからないもの。結果として、企画は見事に的中し素晴らしい演奏会だったから、こうして強調しているというわけ。

デュオもさることながら、大萩さんソロのビラロボスがまた良かった。「5つのプレリュード」は、ギターファンにとっては言わずと知れた名曲である。こういう曲は多くの先達が名演を残しているから、聴衆を満足させるためのハードルが高いのだ。

大萩さんはというと、実に正統的なアプローチだったと思う。よく歌っているけれど、音楽的でない不自然なルバートは一切なし。楽器を良い音色で十分鳴らす。速く弾くべき部分は十分速く。難所をごまかすための減速などもちろん皆無。

こうして並べてみると、「あたりまえのことをあたりまえにやる」ということに尽きるような気もする。だがその「あたりまえ」を隅々まできちんと徹底することはそう容易くないのだ。さらに言えば、そういった「あたりまえ」の積み重ねで人を感動させられるのが名曲の名曲たる所以なんだよな。

ただ、第5番でちょっとした「事故」があったことも触れておかなければフェアではないだろうな。第4番までは本当に完璧だと思ったけど。しかしその「事故」も良い意味で見事に「ごまかした」。冗談で「うまく作曲してたね」なんて言ってたのだけど、実際音楽の自然な流れを損なわずに繕うことに成功したと思う。おそらくこの曲を初めて聴いた人はほとんど不自然さを感じなかったんじゃないかな。これも演奏者の実力のうち。

デュオはボグダノビッチの作品が特に素晴らしいと思った。どちらかといえば地味な作品なのだけど、ボグダノビッチならではの繊細な美しさを満喫。これは作曲者も喜んでくれると思うなあ。

本編ラストのニャタリ作品がやや暴走気味だったのはご愛嬌。まあテクニックがあればこそ、ということで。速く弾きたくなる気持ちはわかるけど、これはブラジル音楽の側面を持つ作品だ。ジョアン・ジルベルトの朴訥のしたギターが持つグルーヴ感をも求めたい。

しかしそういった「若さゆえの暴走」に触れるのもまた、ライブの楽しみだろう。暴走しても崩壊しない、ギリギリのバランスが生む心地良さもあったし、最後のキメも爽快だった。

それにしても、大ホールだから満席にするのが難しいというのはわかるのだけど、後方の空席がもったいない。ほとんどが安いA席である。何度でも書くが、「チケットが高い」と不満を漏らす人の多くは、「安くて良いコンサート」を探す努力などしていない。よって良心的な主催者も、価格を下げる努力が虚しくなる。この悪循環に気付いて欲しいぞ。

それでも努力したくない人のためにこっそり教えてあげると、17日の鈴木大介@白寿ホールは今回も2000円の席が設定されているのだ。学割じゃないので、残っていれば誰でも買えます。和光の「学割1000円」が無ければこっちを最優秀企画賞にしても良かったぞ!

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2005.12.10

今堀恒雄Unbeltipo Trioによる音楽の実験場としての新宿ピットイン、そこに参加する快楽

たとえば1960~70年代頃の、ジャズが劇的に進化した時代に、ニューヨークに住んでいてライブに行きまくっていたらどんなに刺激的な毎日だったろう?そんな人がいたらちょっと羨ましい。でももしその人がすでにお亡くなりになっているとしたら、大して羨ましくない。

過去の音楽はCDやDVDである程度追体験することができる。もちろんそれはリアルタイムで生で聴くこととはまったく意味が違う。しかし代わりに、同じくらい刺激的かもしれない(完全に同じ状況で聴き比べるのは不可能なのだから厳密に優劣を論じるのはあまり意味がない)21世紀のTOKYOの音楽シーンをリアルタイムで体験できるのだ。どこに引け目に感じる理由があるだろう?

僕が心底羨ましいのは、もっと面白くなっているかもしれない音楽をリアルタイムで体験できる、遠い未来のリスナーだけだ。未来が今より面白くないかもしれない、と感じる人って人生辛そう。余計なお世話だけど。僕は20年くらい東京のライブシーンを見続けてきて、面白くなる一方なのである。未来はもっと面白くなるはず、と信じるには十分でしょ。

それでも、1997年にティポグラフィカ、翌98年にシャクシャインと立て続けに解散した頃にはさすがにブルーになりましたよ。もっとライブを見まくっていれば良かったという後悔と喪失感。ティポグラフィカはポニーキャニオンとの契約が2枚で切れちゃうし(ただし業界の状況を考慮して現実的に考えるとメジャーレーベルとしてあの手のアルバムを「2枚も出した」英断をむしろ賞賛すべきかもしれない)、シャクシャインの2ndアルバム(傑作!!!)が録音後約1年もお蔵入りになってしまい、結局日本のレコード会社はどこも手を挙げずアメリカのニッティングファクトリーから出たという事実。世紀末の悪夢だ。

しかしその後の状況はどうだ。梅津和時さんは鬼怒無月を擁する「KIKI BAND」を結成し、現在も活発に活動中(新メンバー加入でさらに楽しみ!)。今堀さんは一時期かなりライブ活動が減ったものの、ソロプロジェクトUnbeltipoを立ち上げる。

忘れもしない、Unbeltipoの初ライブは菊地成孔さんとのデュオだった。打ち込みによる強烈なブレイクビーツの嵐の中、唸りを上げるサックスとギター。一説にはティポグラフィカファンにはあまり評判が良くなかったらしいのだけど、僕は興奮したなあ。「ああこれが、ティポグラフィカを解散させてまで今堀さんがやりたかったことなんだ」と思うと余計に。

僕が勝手に理解したのはこういうことだ。ブレイクビーツであれなんであれ、人間にできることなら人間がやった方がかっこいい(なぜそうなのか、ということを考察しだすと大変だが、「人力ドラムンベース」を標榜するROVOなどの例を見ればわかりやすい)。打ち込みでやるからには、人間には到底実現不可能なことを機械にやらせ、人間は人間にしかできないことをやる。それがUnbeltipoだと。

Unbeltipoの1stミニアルバムは「現代パフォーミングアーツ入門」でも毎年紹介するほどのお気に入り。同じようにすごく気に入っているくれる学生もいる一方で、「理解不能」といった感じの反応を示す学生が過半数。それでいいと思う。インパクトさえ感じてくれれば。

このアルバムの出来には今堀さん自身満足されているようなのだけど、当時のライブについては不思議と「いくらやっても燃えない」という状態だったのだそうだ(「現代ギター」インタビュー参照)。いやライブはライブで毎回異なるゲストを迎えたりしてすごく楽しみだったのだけど。

そんな中、今堀さんが再び結成した固定メンバーによるバンドがUnbeltipo Trioである。ティポグラフィカという、ある意味「人間による究極のバンド」を解散させ、「機械」へと向かった今堀さんが、再び「人間」に戻ってきた。この意味は大きい。

とはいえ、今だから言えることだが、正直、最初はよくわからなかった。いやそりゃかっこよかったですよ。そもそもギタリストとしての今堀さんはわかりやすく言えば「テクニカルなフランク・ザッパ」というイメージ(全然わかりやすくないか)で、普通にガンガン弾いてるだけでかっこいい。トリオという最小限のフォーマットのお陰で必然的にギターの比重が大きいから、そこは堪能できた。もしくは一風変わったジャムバンドと思えば最高。ナスノミツル(B)、佐野康夫(Ds) というリズムセクションも強力だ。

しかしアナタ、これは「ポスト・ティポグラフィカ」なのですよ。DCPRG、東京ザヴィヌルバッハ(以上菊地成孔)、Phonolite(水谷浩章)、ラクダカルテット(水上聡)といった元メンバー達による意欲的なバンドがシノギを削る中、満を持しての「本家」登場なのである。生半可なことで満足できますか。

それでやっと12月9日の話になるのだけど、個人的にやっと、「腑に落ちた」というのが今回のライブ(セットリストは12/3の関内と同じと思われるので、eijiさんのblogをどうぞ)。「あ、こういうことか!」とポンと膝を叩きたくなるような。インタビューでじっくりお話を伺う機会に恵まれ、アタマでの理解も深まったのだろう。しかしそれ以上に、トリオの演奏自体も完成度が上がってきたのではなかろうか。不遜な言い方をすれば、今堀さんのコンセプト(僕自身をそれをきちんと説明することはできないけれど)がバンド全体に浸透してきた印象。ひらたく言うと3人のグルーヴがかっちり噛み合ってきた。そんなことはもっとシンプルなギタートリオだったら当たり前なのだけど、一筋縄ではいかないのが今堀さんの音楽。リズムが柔軟に変化し、何かのきっかけでガチっと切り替わる。そこにどういうルールないし約束事があるのかは見ていてもよくわからないけれど、わからないからこそスリリング。

今堀さんが「修行のよう」と冗談めかして形容するように、この音楽はまだまだ「未完成」なのだろう。しかしそれは、かつてジャズの巨匠達が、新しいスタイルを模索して試行錯誤していた現場にも似ているんじゃなかろうか。そんな空間を共有することの幸福を実感せずにはいられない。来年以降、このトリオと並行して、トリオ+αの編成を模索していくのだという。期待は膨らむ一方で、ますます目が離せない。

ね、どう考えても「未来はもっと面白くなるはず」でしょ?


蛇足ながら、この日は超大物歌手がご来場。終演後ニコニコしながらスタッフの方と談笑しておられたので、楽しんでいただけたのだと思う。「お元気ですか~」と挨拶したかどうかは知らないが。。。

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2005.12.08

11月のライブその他覚書(さがゆき、森山良子、会田桃子、鬼怒無月、喜多直毅他)

11月9日
「See you in a dream」(中村八大名曲集)発売記念ライブ さがゆきvo、大友良英g、渋谷毅p、坂本弘道cello、近藤達郎kb、栗原正己b&recorder、関島岳郎tuba&b-recorder、芳垣安洋ds、高良久美子vib@新宿ピットイン
「上を向いて歩こう」「夢で会いましょう」の中村八大である。その本格的な作品集が、このメンバーでレコーディングされたということが素晴らしい。関係者に心から賞賛を送りたい。さほど広くないピットインはさすがにギュウギュウ。さがゆきさんは晩年の中村八大さんの専属歌手を勤めておられたとのこと。もちろん巧さもあるのだけど、艶っぽい歌から少女っぽい歌までサマになっていて無理がないんだよなあ。まさにミラクルボイス。そんなさがゆきさんも参加している喜多直毅さんの新譜(produced by俺・発売は来年)も皆さん注目してね。

11月12日
森山良子コンサート@文京シビックホール
バックをつとめるギタリスト三好功郎さんに取材した関係でご招待いただく。ありがたや・・・チケットは完売でPA横の特別席でした。必要最小限の演出、最高のバックバンド(三好さんgの他、渡辺貞夫グループの納浩一b、小野塚晃keyら)。普段メジャーな歌手など目もくれない僕だけど、こういう人が世代を超えて愛されるのは大いに納得。生「さとうきび畑」はやっぱ感動しますよ。「涙そうそう」で号泣していた隣の女の子に思わずもらい泣き。亡くなったお父さんのことを思い出したんだそうな。そういう力のある歌って素晴らしい、とつくづく思う。だから逆説的に思うのだ。心に響いてこない歌なんかいらない。インストでいいよ。

11月14日
会田桃子(vln)クワトロシエントス&鬼怒無月(g)Salle Gaveau@江古田バディ
待望の新世代タンゴ対決ライブ。いやもうまったくもって期待通り。Salle Gaveauのメンバーもう一度書いときますよ。鬼怒無月(g) 、喜多直毅(vn) 、佐藤芳明(acc)、鳥越啓介(b)、林正樹(pf) 。タンゴに対するジャズロック的なアプローチを考えたら、これ以上のメンバーは考えられない。パリに乗り込んでリシャール・ガリアーノのバンドと対決して欲しいぞ。喜多直毅さんの新譜にDUOバージョンで収録される「かわいい曲(仮)」も演奏された。やっぱいい曲だなあ。両バンドを掛け持ちする林さんが合同セッションのために書き下ろした「800%」がまた素晴らしかった。クワトロシエントスが4人だから延べ9人だけど林さんが重複しているので計8人。ちゃんと8人のためのアンサンブルになっている。この作曲センスは本当にすごい。それにしても、客層は見事に若かった・・・。SalleGaveuのライブとしては普通なのだけど、前回の会田さんのライブ(たまたま同会場)と比べると。

11月23日
おしゃれジプシィ@世田谷美術館・・・はチケット完売で入れず。まあ遅く行ったのが悪いのだけど。あまりのショックで、受付で随分ゴネてしまった。立ち見でいいから、といくら言っても美術館の担当職員は「管理運営上の都合」で押し通す。後になってチラっと見えた会場内は確かに一杯で、実際立ち見もきつかったかもしれない。しかしせめて、「これ以上入れたら本当に危険です」ぐらいのことは言ってくれたら納得しやすいのにね。

おしゃれジプシィはもちろん素晴らしいバンドなのだが(特に喜多さんがアドリブでガンガン弾きまくるライブ盤はすごいぞ!)、いつもこんなにお客さんを集められるわけではない。「あと一人」のお客さんがものすごく貴重なことだってあるのだ。そりゃどんなに無理をしてもどこかに限界はある。だが「どうしても観たい」という人を拒絶することの重みを、ちゃんと考えてくれているだろうか。いかにも「マニュアル通り」な対応に、複雑な思い。

気を取り直して夜は鬼怒無月(g)有田純弘(バンジョー、g)佐藤芳明(acc)@大泉学園inFへ。今回は特に有田さんに注目。知る人ぞ知るバンジョー&ギターの名手である。バンジョーで「ジャイアントステップス」(コード進行が複雑で難曲として知られるスタンダード曲)弾いちゃうのである。素晴らしいパフォーマンスと絶品の日本酒、と日本酒に抜群に合う「牡蠣酢」に、思わず顔が緩む。


11月某日
都内某スタジオで喜多直毅さんの新譜レコーディング最終日見学。この日は黒田京子さん(pf)、佐藤芳明さん(acc)、クリストファー・ハーディさん(per)が参加。みなさんさすがにもう慣れたもので・・・と思ったら喜多さんがレコーディング用にアレンジをいじったりしていて、ご苦労されている様子。それでも短時間のリハーサルで完璧にこなしてしまうのだけど。「難しい、難しい」と言いながら楽しんで?演奏されている様子が伝わってきて、聴いている方もワクワクする。後日仮ミックスされたものも聴かせていただいたけど、これは凄いですよ。「こんなアルバム、誰が買うんだ!?」って思うぐらい凄い(笑)。

いや真面目な話、個性的な音楽ほど説明しにくく、ジャンル分けも不明で売り込みにくいというのが現実。売るためには「(ジャン=リュック・ポンティ+シャンカール+フェルナンド・スアレス=パス)÷3=喜多直毅」ぐらいのことは言わないといけないのか。バカバカしいけど。当たらずと言えども遠からず、だが、喜多さんは喜多さんだ。そういった世界の巨匠達にもないものがあるからこそ強く惹きつけられる。

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2005.12.06

平成17年度「現代パフォーミングアーツ入門」第8回(12月5日)~ジャズのいろいろな形2

先週の続き・・・のつもりが、かなりマニアックなものまで。

[DVD]「Calle 54」よりティト・プエンテ楽団(3限は最後に紹介)

[CD]菊地成孔「南米のエリザベス・テーラー」より「Lounge Time #1」「京マチ子の夜」
*2005年発売。映画「大停電の夜に」サウンドトラックを除けば菊地さんの最新リーダーアルバム。
*バンドネオン、弦楽器の参加が特徴的。

[CD]東京ザヴィヌルバッハ「Live in Tokyo」より「Half Moon」
*坪口昌恭(key)、菊地成孔(sax他)、五十嵐一生(tp他)によるユニットの、99年の幻の?1stライブアルバム。限定300枚という話。その後五十嵐さんが脱退。
*坪口さん自身が開発した自動演奏ソフトを使用しているらしい。
*坪口さんはDCPRGにも参加。この辺かなり繋がってます。

[CD]Jaggajazzist「a livingroom hush」より「animal chin」(3限のみ)
*ノルウェーの先鋭的なジャズグループ

[CD]ティポグラフィカ「フローティング・オペラ」よりタイトル曲
*97年に解散した今堀恒雄(g)率いる伝説のバンドのラストアルバム。菊地成孔もメンバー。
*リズムの「訛り」をコンセプトにしたバンド。4拍子が基本だがすごく複雑に聞こえる。DCPRGにも影響を与えているのがわかると思います。
*打ち込み(シーケンサー)は一切使わず、生身の人間によるアンサンブルを追求。

[CD]今堀恒雄「Unbeltipo」
*今堀さんがティポグラフィカを解散したあとに立ち上げたソロプロジェクトの1stミニアルバム。
*今度は打ち込み使いまくり。
*(念のため)今堀さんはこういう複雑な作品ばっかり作っているわけではなくて、アニメのサウンドトラックの仕事ではポップな曲、美しい曲もたくさん書いています。
*【追記】今堀さんの最新プロジェクト、unbeltipo trioは12/9に新宿ピットインでライブあり。

[CD]THE SIX WINDS「NUMBER 6」より「Belfast」
*梅津和時(sax)参加のサックス6重奏団のライブ盤。梅津さん以外のメンバーはヨーロッパ人(収録がオランダなのでオランダ人かな?)。

[CD]三好功郎「ユア・スマイル」より「Paradise of Fishes」(3限のみ)、「FOREST SONG」(5限のみ)
*アコースティックギターによる傑作ジャズアルバム。こういう風に、適度なグルーヴと緊張感を伴って、甘ったるくないけど心地よいアコースティックギターの音色が響くアルバムってのがなかなか貴重。

[DVD]セザール・カマルゴ・マリアーノ(pf)&ホメロ・ルバンボ(g)「DUO」より「Samambaia」、「There will never be another you」(3限のみ)、「Curumim」(5限のみ)
*ブラジル人ピアニスト&ギタリストによるアコースティック・デュオ。
*マリアーノは「Samambaia」の作曲者。この曲は三好功郎&小野塚晃もカバーしている他、ヨーヨー・マのブラジル音楽アルバム「オブリガート・ブラジル」にも収録されており、もはやスタンダードと言ってもよい。
*「ホメロ」はRomeroと綴ります。ポルトガル語では先頭のRがHのような発音になるらしい。

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