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2005.12.12

大萩康司&趙静デュオという最高のクリスマス・ギフトを低価格で提供してくださった和光市民文化センターには本年度の首都圏クラシックコンサート最優秀企画賞を差し上げたい

12月10日、和光市民文化センター大ホールにて大萩康司(g)&趙静(vc)リサイタル。

地方公共団体が主催するコンサートにはリーズナブルなものが多いので、要チェックである。地方といっても東京の市部(三鷹市、武蔵野市etc)や埼玉・神奈川・千葉あたりは都心からもすぐだし。この日の和光市も池袋から20分弱。市谷・飯田橋から東京メトロ有楽町線直通で30分ほどである。

リーズナブルといっても通常3000円ぐらいなのだけど、この日はS席3000円に加えてA席2000円の設定あり。しかも学生は各1000円引きだという。てことはA席は1000円!?これは破格でしょう。A席といっても最後部にオマケようにくっついているのではなくて、後方1/3くらい丸々A席。僕もA席の前の方で見たのだけど(当日券で余裕で取れた!)、音響も良くステージとの距離もほどほどで鑑賞にはまったく問題なし。

で、出演が大萩康司(g)&趙静(vc)ですよ。年に何回もない、「行かなきゃ損」というコンサート。プログラムは大萩さんご本人のblogを。バロック・古典から現代までの名曲がズラリ。「捨て曲」(と言ったら失礼なのだけど、オマケみたいに入ってる曲ということ)一切なし、全部聴きドコロ。

13日の東京公演はS席¥7,000/A席¥5,000だけど、この出演者・内容なら東京の相場を考えれば妥当でしょう。それだけの価値のあるものを、数分の一の価格で提供していただいたということ。CD発売記念ツアーだから独自企画というわけではないけれど、これをセレクトした担当者のセンスは賞賛に値しますよ。
(続く)

続き。
趙静さんはこのほど、世界屈指のレベルと言われるミュンヘン国際コンクールで優勝したのだけど、コンサートスケジュールが決まったのはそれよりずっと前だったはずですからね。

とはいえ、演奏の良し悪しは蓋を開けてみないとわからないもの。結果として、企画は見事に的中し素晴らしい演奏会だったから、こうして強調しているというわけ。

デュオもさることながら、大萩さんソロのビラロボスがまた良かった。「5つのプレリュード」は、ギターファンにとっては言わずと知れた名曲である。こういう曲は多くの先達が名演を残しているから、聴衆を満足させるためのハードルが高いのだ。

大萩さんはというと、実に正統的なアプローチだったと思う。よく歌っているけれど、音楽的でない不自然なルバートは一切なし。楽器を良い音色で十分鳴らす。速く弾くべき部分は十分速く。難所をごまかすための減速などもちろん皆無。

こうして並べてみると、「あたりまえのことをあたりまえにやる」ということに尽きるような気もする。だがその「あたりまえ」を隅々まできちんと徹底することはそう容易くないのだ。さらに言えば、そういった「あたりまえ」の積み重ねで人を感動させられるのが名曲の名曲たる所以なんだよな。

ただ、第5番でちょっとした「事故」があったことも触れておかなければフェアではないだろうな。第4番までは本当に完璧だと思ったけど。しかしその「事故」も良い意味で見事に「ごまかした」。冗談で「うまく作曲してたね」なんて言ってたのだけど、実際音楽の自然な流れを損なわずに繕うことに成功したと思う。おそらくこの曲を初めて聴いた人はほとんど不自然さを感じなかったんじゃないかな。これも演奏者の実力のうち。

デュオはボグダノビッチの作品が特に素晴らしいと思った。どちらかといえば地味な作品なのだけど、ボグダノビッチならではの繊細な美しさを満喫。これは作曲者も喜んでくれると思うなあ。

本編ラストのニャタリ作品がやや暴走気味だったのはご愛嬌。まあテクニックがあればこそ、ということで。速く弾きたくなる気持ちはわかるけど、これはブラジル音楽の側面を持つ作品だ。ジョアン・ジルベルトの朴訥のしたギターが持つグルーヴ感をも求めたい。

しかしそういった「若さゆえの暴走」に触れるのもまた、ライブの楽しみだろう。暴走しても崩壊しない、ギリギリのバランスが生む心地良さもあったし、最後のキメも爽快だった。

それにしても、大ホールだから満席にするのが難しいというのはわかるのだけど、後方の空席がもったいない。ほとんどが安いA席である。何度でも書くが、「チケットが高い」と不満を漏らす人の多くは、「安くて良いコンサート」を探す努力などしていない。よって良心的な主催者も、価格を下げる努力が虚しくなる。この悪循環に気付いて欲しいぞ。

それでも努力したくない人のためにこっそり教えてあげると、17日の鈴木大介@白寿ホールは今回も2000円の席が設定されているのだ。学割じゃないので、残っていれば誰でも買えます。和光の「学割1000円」が無ければこっちを最優秀企画賞にしても良かったぞ!

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Comments

沿線在住ですので、和光市民文化センターの
電車のつり広告は気になっていました。
しかし、知らない分野の音楽では、良い悪い
の判別が出来ず、行きませんでした。
12/10も車で脇を通過しました。
良い音楽ならば、聞きに行きたかった。
クラシック系の良い音楽も聞いてみたいです。

Posted by: maida01 | 2005.12.12 at 12:57 PM

maida01さん、お久しぶりです(以前のコメント確認しました)。
そうですよね。専門誌に執筆する立場として、その辺きちんとお伝えしなければ、と思ってはいるのですが・・・。一応このblogの「ライブ・公演情報」に入っているものは僕が行きたいと思うものなので、全部「お勧め」と思っていただいてよいのですが、どうしても数が増えてしまい、さらにその中で「特にこれ」とランク付けするのは難しいところです。今月後半ですと強いて言えば、17日の鈴木大介@白寿ホールもかなり自信を持ってお勧めできるものです。ギターがお好きな方に対しては特に。

Posted by: tokunaga | 2005.12.13 at 06:54 PM

tokunagaさん、
どうもありがとうございます。
残念ながら、17日は用事があって。
またお勧めを拝見して、ライブに行きます。

時々拝見しています。

Posted by: maida01 | 2005.12.13 at 09:32 PM

ご無沙汰してます。

あぁ~、白寿ホール、めっちゃご近所なので行きたい行きたい!
でもバスケがぁ~…。
間に合ったら途中からでも行ってみようと思います。

Posted by: みど | 2005.12.15 at 10:29 PM

12/9のunbeltipo Trioと日程が並んでいたのですが、
チェックが遅くてこちらは行くのをあきらめました。

夜行バスキャンセルして、宿とればよかった・・。

●これからも情報収集をしに、拝見させていただきます。

Posted by: ばば | 2005.12.15 at 11:09 PM

あ、なんか盛り上がってる!

>maida01さん
どうもありがとうございます。maida01さんのblogは話題がとても多岐に渡っていますね。こちらも参考にさせていただきます。

>みどさん
そうでしたよねえ。僕は逆に、以前は自転車ですぐの距離だったのですが・・・お陰であの辺では終電をまったく気にせず飲むことができて、結局始発が動き出してあんまり意味なかったことが数回。白寿ホールは企業の文化事業という感じで他にもいい企画やってますから是非チェックしてみてください。

>ばばさん
僕も当日券があんなに残っているとは思わなかったのと、初めてのホールでしたが行ってみたら音響はけっこう良かったので、そうとわかっていたらもっと強く勧めていれば良かったと後悔しました。
またどこかのライブ会場で!

Posted by: tokunaga | 2005.12.16 at 08:32 AM

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