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2006.01.07

稲岡邦弥さんにも聴いて欲しかった太田惠資、喜多直毅、Jim Ediger、Martin Johnsonという4人の超個性的なヴァイオリニストの競演

7日、三軒茶屋グレープフルーツムーンにて『The Shape of Fiddle to Come』というイベント。出演は以下の3組(演奏順)

Johnson's MotorcarJim Ediger:fdl, g、Martin Johnson:fdl, g, vo)
喜多直毅vln・津山知子pf Duo
Arabindia(常味裕司:oud、吉見征樹:tabla、太田惠資:vln)

まず出演ヴァイオリニスト(フィドラー)と主催のうすいさんによる「新年fiddle談義」が20分ほど。fiddleとviolinは楽器としては同じものだが、主にジャンルによって呼び方が使い分けられている。僕も知らなかったけどfiddleって面白い意味(多くはnegativeだけど)がいろいろあるのね。続いて演奏スタート。

トップバッターのJohnson's Motorcarはケルト(アイリッシュ、スコティッシュ)系。日本育ちというJim Edigerさんによる日本語の解説付き。持ち替えで一方がギターで伴奏したり、ボーカルが入ったりするけど、基本的にはヴァイオリン2本によるインスト。2本の旋律楽器で音楽が出来上がってしまうところが新鮮。アイリッシュ・フィドルならではのフレージングや装飾音も。ギネスビールが飲みたくなる。普段はアイリッシュパブで演奏しているらしい。てことはミュージックチャージ無し?これは聴きに(飲みに?)行かねば!

2番手の喜多直毅vln・津山知子pf Duoはタンゴ・・・なのだけど、これがまたブッ飛びもの。毎度のこととはいえ、この二人、どうしてたまにしか演奏しないのに、リハなんて大してやってないはずなのに、こうなのか。いつもと同じ譜面でいつもと同じ曲をやっているはずなのに、まるで違う印象を受ける。演奏が白熱すると譜面を無視した暴走が始まるらしく、終演後は「いっぱい間違えた」と言ってゲラゲラ笑っていた。この痛快さはライブならでは。誤解のないように補足しておくと、どんな展開になっても一体感は途切れないので聴き手としては「間違えている」という印象はほとんど受けない。事実、僕も「アレンジが変わったのか?」と思ったほどだし、初めて聴いた人は元々そういうアレンジなのだろうと思ったに違いない。

このデュオが10月に下北沢レディジェーンで演奏したとき、素晴らしいライブレポートを書いてくださった稲岡邦弥さんが、一段とパワフルで情熱的なこの日の演奏を聴いたら、果たしてどんな感想を漏らしただろう?こっちも聴いて欲しかったなあ。これだけ即興性が豊かだと、タンゴファンよりジャズファンに受けそうな気がするし。

「こんなものタンゴじゃない」と言われる前に、僕は先手を打ってHYPERTANGOという造語を考えたのだけど、やっぱりこれは紛れもなくタンゴじゃないか、という思いもある。これほどのオリジナリティと伝統的なタンゴの技法を兼ね備えたものをきちんと評価しないんだったら、タンゴブームって何だったのさ。博物館の隅の方にひっそり陳列されていた"ピアソラ"の剥製を、一番目立つショーケースのところまで引っ張り出したくらいのものか。

ライブの話に戻る。

最初のJohnson's Motorcarからすごく盛り上がったけど、喜多・津山デュオでさらにヒートアップ。こりゃArabindiaはやりにくいかなあ、と思ったけれど。。。

常味さんのウードで会場の空気が変わった。冷ややかな緊張感に包まれる。太田さんも気合十分。ボイスもいつもながら見事。トリを飾るに相応しい。アラブ音楽って本当にかっこいいんだよねえ。「ロンガ・シャーナーズ」なんて、「本物」を聴いてしまうと女子十二楽坊のカバー(何故かタイトルは「自由」)なんてお遊びにしか聞こえない。ちなみにこの曲、女子十二楽坊が当初「作者不詳」として発表してしまった(確信犯にしては間抜け過ぎるので単によく調べなかっただけだろう)ため、今でもそのような記述をネット上に見かけるのは困ったものだ。作曲者はアドハム・エフェンディ(Santuri Ethem Efendi)という人。

最後にヴァイオリニスト4人でセッション。曲はJim Edigerさん作曲のブルース。伴奏楽器は無し。このイベントならではの企画だ。普通なら「ヴァイオリンだけで??」と思うところだが、4者4様のすごい演奏を聴いた後だけに、もはや驚きはない。たとえばギタリスト4人だったらこういうセッションはごく当たり前のことだけど、それと同じ感覚。

しかしこれ、こんな小さなスペースでやるイベントじゃないような。ヴァイオリンという楽器に興味がある人、あるいはワールドミュージック全般が好きな人なら間違いなく楽しめる。それどころかあっけにとられ、「目から鱗が落ちる」ような体験となる可能性は高い。潜在的なリスナーは非常に多いはずなのに。。。なんとももったいない。

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Comments

ご来場&熱のこもったレビューありがとうございました。いいイベントでしたねー、本当に(我ながら言ってしまう)。

>潜在的なリスナーは非常に多いはずなのに。。。なんとももったいない。

プロモは相当したんですよー。でも"始まり"は大抵こんなものでしょう。
個人的には、vln/fdl弾きを「志して」いるのに来なかった人間は価値観6年遅れたと思ってますけどね(w。*既にvln/fdl弾きに成っている方はもちろん除きます。

ではまたどこかでー。

Posted by: うすい@主催者 | 2006.01.27 at 11:48 PM

うすいさん
すっかりお返事遅くなってしまいましたが、コメントありがとうございました&お疲れ様でした。
太田さん企画のヴァイオリンサミットもあるはずですし、徐々に盛り上げていきたいですね。

Posted by: tokunaga | 2006.02.08 at 07:58 PM

Believe yin-yang, light and darkish, pepper and salt. Pictures stir up some thing all-natural and instinctive inside us. The reversed Idiot card nonetheless conveys the other meanings to me, besides for the careful bit. http://www.youtube.com/watch?v=ietDAAJW_CE

Posted by: Inge | 2014.03.07 at 12:37 PM

Appreciation to my father who told me concerning this blog, this webpage is genuinely remarkable.

Posted by: dui attorneys in Tenacious Beach | 2014.08.14 at 03:34 AM

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