2006.04.24

MUSIC BIRD「MOONKSのNEW JAZZ GENERATION」に出演

JAZZ TODAY in Komabaの総括をしなきゃと思いつつ、その前に。

友人の白澤茂稔君に誘われて衛星デジタルラジオMUSIC BIRD
MOONKSのNEW JAZZ GENERATION」という番組に出演してきました。

以下番組中で紹介した曲:
■喜多直毅「兄と妹」
喜多直毅新譜より。こちらで試聴可。

■渡辺香津美「VOYAGE」
ご存知80年代の名盤「MOBO」より。マーカス・ミラー&オマー・ハキムのリズムセクション、ピアノは後にマイルスバンドに参加するケイ赤城だ!

番組中では言う機会がなかったのだけど、僕らが真剣に音楽を聴き始めた10代の頃、YMOや渡辺香津美がいたことは大きかった。YMOは敢えて「イエロー」を名乗り人民服を着て、「お前らどーせ日本も中国も区別つかないんだろ?」と初めて欧米人達を上から見下ろしたバンドである、と思う。いやそれは僕の勘違いかもしれないのだが、大事なのは、お陰でくだらない洋楽コンプレックスを持たずに済んだということだ。

■三好功郎「PARADISE OF FISHES」
アコースティックジャズギターの名盤「Your Smile」より。新宿ピットイン「朝の部」で聴いて「この人はタダモノではない」と感じた三好さん、やっぱりその後大活躍。でもこのアルバム廃盤なんだよなあ・・・

■小沼ようすけ「I LOVE YOU」
新譜「3,2&1」より小曽根真さんとのデュオ。小沼さんは実力者と共演してさらに力を発揮するタイプ、と再認識。

■南博「SERENE」
カルテットGO THERE!の2ndアルバムより。美しい!

■WEST/ROCK/WOODS「WITH OR WITHOUT YOU」
ロックの名曲をピアノトリオでカバーするというコンセプトのバンド。デビューアルバムより。ピアノの林正樹さん、僕の知っている20代の日本人ピアニストの中でイチオシ。なんでこの人がメジャーデビューしないのか、メジャーレーベルのプロデューサーの目は節穴か?と思っていたら、このバンドの2ndはメジャーから出るらしい。でも林さんはオリジナルも素晴らしいんだよなあ。

■SEMBELLO「floor 4076」
SEMBELLOの2ndアルバムより田中邦和のオリジナル。ソプラノサックスの音色とフレージングが最高。ゲストのドラマー外山明さんがまた、とんでもないプレイをしている。彼らのCDはジャズ売り場には置いてない(JPOPの方、スカパラと一緒に入っていることが多い)のだけど、ジャズファンに聴かれないのはもったいなさすぎる。

■喜多直毅「OBLIVION」
2ndアルバム「HYPERTANGO II」より黒田京子さんとのデュオ。さきほど黒田さんの日記読んで感動しました。あんな思いからこの「音」は生まれるのだなあ。

放送は6月頃だそうです。聴ける人は少ないと思いますが・・・

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2005.08.15

終戦記念日と映画「ヒトラー 最期の12日間」と芝居「だるまさんがころんだ」

このblogでは政治的な発言は極力避けるつもりなのだけど、考える材料ぐらい示しとこう。

各新聞の社説を手軽に読み比べたりできるのはインターネット時代なればこそ。産経新聞社のサイトにまずアクセスし、左上の「社説など」→「主張(社説)」をクリックしましょう。このページから他の全国紙(朝日・読売・毎日・日経)の社説のページへリンクが張られており、非常に便利です。

それと直接は関係ないのですが、公開中の映画「ヒトラー 最期の12日間」は必見です。同名の原作本も出版されていますが、訳者は東京医科歯科大学教養部の(すなわち僕の同僚の)鈴木直教授です

【追記】戦争もの繋がりということで、31日まで下北沢スズナリで上演中の燐光群「だるまさんがころんだ」にも注目を。忘れちゃいけないイラク問題。選挙も近いし。

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2005.07.16

現代ギター7月号「渡辺和彦の音楽問わず語り」には頷ける部分も多いけれど

音楽評論家・渡辺和彦氏による現代ギター誌連載コラムの今月号の内容は「熱狂の日---音楽祭が突きつけた音楽の100円ショップ」と題し、主にコンサートチケットの価格に関する話題。

途中CDの価格についても言及されている。「日本のCDは高すぎる」とフンガイしている公務員に対して「あなたの給料もね」と言い返したという。消費者の購買力を無視して絶対的な価格だけで「高い」「安い」を論じるのは意味がないということ。付け加えるならば、全体的な物価水準も考慮すべきだろう。僕は数年前、カナダにしばらく住んだことがあるけれど、生活費は大雑把に言って東京の約半分という感じだった。対してCDは(日本と違って値段にかなりバラツキがあるが平均的には)東京で買う輸入盤よりちょっと安い程度で、思ったほど安くないな、という印象。

「CDが1枚3000円もするなんて暴利を貪っている」という感情論も困りものだ。デタラメなコスト計算によって「暴利」と勘違いしているケースは論外だが、そもそも自由主義経済において利益追求を否定するのは間違っている。生活必需品じゃないんだから、高すぎると思うなら買わなければいい。安くした方が売り上げが伸びて儲かる、ということになれば自然に値段は下がるはず。再販制度はあるにしても、定価の設定はレコード会社の自由なのだから。

とはいえ、物事はそう単純ではないし、日本市場特有の問題点は認識しているつもりなので、細かいツッコミはご容赦願いたい。かいつまんで述べると、3000円のCDが高すぎるというより、ハンで押したように一律3000円前後(国内盤の場合)だったことが最大の問題なのだと思う。この点は現在ではいくぶん改善されており、たとえばジャズだったら実力派日本人ミュージシャンを多数擁するEWEレーベルは2000円台前半のラインナップがかなり豊富だ。インディーズ系も2500円前後の価格設定をするところが少なくない。「3000円」に文句をつけてきた人達は、こういったレーベルにこそ注目して欲しい。

本題のコンサートチケットの話に戻ると、渡辺さんも記事中で「音大を卒業したばかりの・・・(中略・すなわち若手演奏家)のリサイタル料金までがなぜ中堅クラスと同じ3000円前後に設定されるのだろう」と指摘し、若手に対して「1500円でチャレンジしてはどうか」と提案しておられる。一方で「コンサートの入場料金を下げれば客は増えるのか。話はそう簡単にはいかない」ということもあらかじめ言及しておられる。さらには「(値段を下げるためには)スポンサーを見つけなければならない」とも。ここまでまったく異論はない。

単純にチケットの値段を下げるとどうなるか。これも渡辺さんが書かれている通りで、売り上げが減るだけである。有名な演奏家、テレビで取り上げられた演奏家に対して喜んで高いチケット代を払う人は多いが、無名演奏家の経歴やコンサートプログラムを詳しくチェックして「これは"買い"だ」と思ってくれる人は極めて少ない。下手をするとナメられる。すなわち「安かろう悪かろう」と思われてしまう。

で、そうならないように、無名の実力者に対しても正当な評価を与えるのが音楽ジャーナリズムの一つの大きな役割でしょう。スポンサー獲得においても、有力者の推薦があるのとないのでは全然違うはず。渡辺さんが「これは」と思う奏者が実際に「1500円でチャレンジ」する気概を持っていたならば、「お墨付き」を与えて後押しして欲しいと思う。また、後押ししたくなるような若者をどんどん見出してクローズアップして欲しい。僕みたいな無名ライターが「この演奏家に注目しないなんてバッカじゃーねーの!?」と吼えたところで大して効果はないだろうけど、渡辺さんのような名のある方なら違う。ぜひ率先して行動していただきたいものだ。もちろん僕の気付かないところですでにやっておられるかもしれないし、そうであることを願う。

もちろんこれは渡辺さんに限った話ではなく、音楽ジャーナリズムに関わるすべての方々に対して言いたいことだ。「後押し」にもいろいろなやり方があるだろう。皆(プロアマ問わず)簡単にできることから始めればいいのではないか。このblogだって、ごく微力でもなにかのタシになれば、と思う次第。


蛇足ながら、渡辺さんのコラムの結びに「ついでに若い音楽評論家の卵よ。私のような既存のダメ評論家にひと泡吹かす意味で、価格破壊原稿料で業界に殴り込みをかけてはどうか。」とあるのはレトリックとしては面白いけど、失礼ながら業界の実情を無視しているように思う。無名ライター・評論家達は「価格破壊」などするまでもなく、すでに買い叩かれているのではないか。

それに、少なくとも僕には「ひと泡吹かそう」なんて類の対抗心はこれっぽっちもないからなあ。

「既存のダメ評論家」(渡辺さんはもちろん謙遜されているだけで該当しない)についてはせいぜい、いい文章が書けなくて落ち込んだときに「この人よりは多少まともなことが書けそうだからがんばろう」と元気を出させてもらう意味で意識する程度である。

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2005.07.11

村治奏一の新しい伝説は横浜から始まる、なんて言ったら少々大げさかもしれないけど

たまには数学の話でも。今日11日は前期月曜5限の選択科目「離散構造」の最終日。ずっと原書(英語の簡単な教科書)の輪読をやってきたのだが、先週で予定の範囲が終了したので最後は講義をやることに。

僕の専門に近い「グラフ理論」という分野なのだけど、初歩から始めて細かい定義などは適宜省略しながらケンペによる「4色定理の証明」までを一気にしゃべり倒す。

かなり無茶である。だが自慢じゃないけど東大と偏差値が大差ない我が大学の優秀な学生達はちゃんとついてきてくれるのである。ありがたいことだ。「うまく喋ろう」などとは考えずに、自分が面白いと感じることをただひたすら熱く語る。これが実に気持ちよい。僕はカラオケが苦手なのだけど、おそらくカラオケ好きな人が持ちネタを思う存分熱唱した後の爽快感にも勝ると思う。

ちなみに「4色問題」は1976年に解決されるまで有名な未解決問題の一つだった。ケンペによる「証明」は巧妙な「間違った証明」の例として知られており、「証明」が終わった後に「さてどこが間違っていたでしょう?すぐ答え言っちゃうとつまんないからしばらく考えてね、じゃあサヨナラ」と言って締めくくるのがいつものパターン。

というわけで気の毒な学生達は最後の最後でスッキリしない状況に放り出されるのだが、こちらはスッキリして一路横浜へ。神奈川県民ホールでクラシックギター界期待の星、村治奏一君のCD発売記念リサイタル。

開演時刻にすべりこみセーフ。意外と空席が多いのにまず驚く。先月18日にミューザ川崎シンフォニーホールで東京交響楽団と「アランフェス協奏曲」演奏してコンチェルト・デビュー、月末にはNHK「トップランナー」に出演。一気にスターへの階段を駆け上るのかと思いきや、そう簡単にいくものでもないらしい。

奏一君は姉の佳織さん同様、物心がつく前からギターに触れ、父・昇氏による早期教育(ただし"英才教育"とはちょっと違う。その辺は昇氏の著書参照)を受けている。指が速く動くのなんか当たり前。タンスマンの難所でもコロコロとなめらかに転がるがごとく音楽が流れていくのが心地よい。

今回個人的に特筆すべきと思ったのはデュージャン・ボグダノビッチの作品。4月に来日した、あのデュージャンである。新譜にも収録された「3つのアフリカン・スケッチズ」と「ジャズ・ソナチネ」が演奏されたが、いずれも非常にイキイキとした快演だった。デュージャン・ファンとしては独特の響きとリズムを持つ彼の作品に共感を持って演奏してくれる若いギタリストの登場はそれだけで嬉しい。

デュージャン作品には、近年人気のあるディアンス、ヨークらの作品のようなわかりやすい派手さはないが、それを補ってあまりある美しさと複雑な(ゆえに心地よい)グルーヴを内包している。ただし音符をただなぞっても全然「音楽」にならないと思う。他の現代作品を演奏するときとは違ったセンスが要求されるはず。デュージャン本人の演奏はもちろん見事だが、奏一君の演奏はこれまでに聴いた本人以外による演奏の中で出色のものだった。「ジャズ・ソナチネ」のラスト、バルトーク・ピチカートが太い音色でバシッと決まると「イエーィ!」と叫びたくなる気分。これを聴き逃した横浜のギターファンはもったいなかったね。

思えば3年ほど前、すでにCDデビューしてしばらく経った大萩康司君のリサイタルを同じ神奈川県民ホールで聴いたときも、空席が多くて驚いた。しかし演奏はやはり素晴らしかった。神奈川県民ホールは若手ギタリストにとって鬼門なのか?「横浜不入り名演伝説」誕生か!?

て縁起でもないですね。もちろんそんなのは一時的な現象でしょう。もしかすると東京・横浜で続けて公演する場合、横浜の方が手薄になる傾向があるのかも。今回は13日高松、14日徳島、16日大阪、24日広島と続いて最後が26日東京(三鷹)。お近くの方はぜひチェックを。

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2005.07.03

ここらで最近のライター活動について

現代ギター7月号:沖仁さんのインタビューとCDレビュー2枚。
ジャズ批評7月号:4月7日のデュージャン、小沼ようすけ、喜多直毅ライブレポート。
intoxicate(タワレコ発行のフリーペーパー):ライブイベントintoxicate#15のレポート(出演はマデリン・ペルー&saigenji)

intoxicateはまあタダですし、タワレコに行けば確実に手に入るのでどうぞご覧ください。他の2誌は大きな書店でないとないかも。現代ギターは楽器屋さんに置いてあることが多いですが。

あと執筆活動意外では、Bishop Recordsのサイト青木菜穂子さん(p)を迎えた座談会に参加。

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2005.06.16

大井浩明(pf)、鈴木大介(g)、斎藤和志(fl)、といった演奏家達のblogは面白すぎて、自分で文章を書くのがいやになる

いつも思うのだけど、音楽について一番よくわかってるのは、そりゃプロの音楽家でしょ。優れた音楽家が、音楽と同程度とまでいかなくてもそこそこの文才にも恵まれていたら、僕みたいなチンケなライターなんてかなうもんですか。せいぜい、ちょっと変わった視点を提供するぐらいのもの。謙遜ではなく実感です。

で、実は珍しくないようなんですね。名演奏家=隠れ名ライターであるケース。彼らの文章がなかなか世に出ないのは、一つには立場上書きにくいことも多い、というのがあるだろうけど、単純に本業が忙しくて執筆業に多くの時間を割けない、という理由も大きかったのではないか。

しかしそれも今や過去の話となりつつある。blogの発明によって執筆→公開の手順が簡略化された結果、音楽家による読み応えのある(単なる日記ではない!)blogが次々に登場しているのだ。そのご紹介をいくつか。

とりあえず内容に圧倒されるのは、現代音楽の演奏で名高いピアニスト、大井浩明さんのblog。音楽ライター山尾敦史さんのblogで知りました。勉強になります・・・

ギタリスト、鈴木大介さんのblogは日記風ながら、幅広い音楽性を反映し、端々に鋭い洞察が読み取れる興味深い内容。富ヶ谷・白寿ホールでのシリーズコンサートは毎回ハイレベルですが、次回、18日は武満徹による映画音楽の新アレンジなどを含む特に楽しみなプログラムです。

素晴らしいフルーティスト、斎藤和志さんのblogがまた面白い!記事中で謙遜されてますが、若手日本人フルーティストの中で間違いなくトップクラスの実力でしょう。実は以前プライベートなパーティで同席させていただいたことがあるのですが、「え、その曲を、そんな風に!?」というものすごい演奏を聴かせていただきました。

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2005.05.08

群像新人賞評論部門優秀賞に水牛健太郎氏「過去 メタファー 中国--ある『アフターダーク』論」

友人の水牛健太郎氏が表題の賞を受賞しましたので、個人的なお祝いの意味も込めてお知らせまで。Webでの発表はこちら

受賞作は5月7日発売の「群像」6月号に、選考委員の講評等と共に掲載されています。内容は村上春樹の小説「アフターダーク」を主題とした評論。過去の村上春樹作品との関連も含めて書かれているので、何冊か読んだことのある人なら面白く読めると思います。

小説部門の方ばかり注目されがちですが、評論部門も柄谷行人や中島梓を輩出しているのですね。

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2004.10.15

奥田英朗の直木賞受賞作「空中ブランコ」について少しだけ語ってみたりして

つい数時間前のことである。

電車の中で、若者がケータイで通話していた。これだけなら別に珍しくともなんともない。ところが突然声を荒げてこれを注意するおっさんがいた。

若者は無視した。おっさんは再度注意したがこれも無視。次の駅で若者は、通話を続けたまま降りようとした。

そのときだ。

おっさんはなんと、「やめろと言ってるだろう!」と若者を後ろから突き飛ばした。意表を突かれボー然とする若者。フテブテしさの割には性格はおとなしかったようで、「殴ることないじゃないですか」と力なく言って睨み返すのみ。

僕は思わず座席から立ち上がり、こう言い放った。

「おっさんあんた、正義漢ぶってるけど自分が無視されたのが悔しかっただけだろ?カッコよく注意したつもりだったのにやめてくれなかったから、引っ込みがつかなくなっちゃったんだろ?たしかに電車内での通話はうざったいけど、あんたの暴力を正当化できるほどの大迷惑でもない。しかも相手がひょろっとしたやつだから強気になっただけで、もっと体格のいい若者だったら絶対やれないよな。スーツを着た営業マン風のやつもよく電車内で通話してるけど、いちいち注意してるのか?しないよな。弱そうで明らかに「格下」の人間だからこそ威圧的な態度を取れるんだろ?ダサい。ダサすぎるよおっさん」

今度はおっさんがボー然。二の句が接げない。決まったね。


。。。ウソです。
ほんとは黙って見過ごしました。でもおっさんの暴力は誇張なしの実話。びっくりしたなあ。

ほんとは言いたかったのだ。勇気が無かった。情けない。

前置きが長くなったが、つまり「空中ブランコ」に登場する精神科医伊良部は、こんな風に、普段僕らの心の中でくすぶっている本音を代わりにズバズバ言ってくれる人物である。

いや、言われているのは我々だ。誰しも心当たりがあるようなことばかり。自分こそカッコ悪いオヤジであることを思い知らされる。

なのにちっとも不快でないのは、

「カッコ悪くてもいいじゃんん。つまらない見栄やプライドを捨て、大切なものをしっかり見つめて生きようぜ」

という肯定的なメッセージに繋がっているからである。こうやって言葉にすると実に青臭いが、「笑い」の要素がその青さを見事に覆い隠してくれる。

最後の短編「女流作家」が特に好きだ。なぜ好きか、ということを説明するとネタバレみたいになってしまって面白さが半減しそうなのでここには書かない。読んだ人にだけ説明してあげます。

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2004.09.08

なぜ芝居を観る人は少ないのか

このblog、ご覧の通り90%以上は音楽関係の記事なんだけど、うちが駒場アゴラ劇場の法人支援会員になっているせいか、演劇系サイトfingeの「注目のウェブログ」に登録されており、そちらからのアクセスがけっこうあるようです。たまにはそっち系のネタを。

ここでも繰り返し書いているように僕は「演劇ファン」ではない。いくつかの贔屓の劇団以外で観るものは非常に限られている。アゴラの会員になっているのは教育目的が主で(その割には学生の反応は芳しくないが)、「まー(自宅の)近所だし」ってのもある。

とはいえ、80年代の小劇場ブームを学生時代に経験しており、何人かの演劇関係者との御縁もあって、非演劇ファンとしては芝居をよく観る方だろう。少なくとも常に関心は寄せている。

で、そいういう非演劇ファンとして、なぜ芝居を観る人は少ないのか、ということを考えてみよう。

結論から言えば、要するにあんまり面白そうじゃないからである

より正確に言えば、「面白そう」と思わせる情報が少ない、ということ。特別ファンではない人間が、一定のお金と時間を割いて芝居を観に出かけるというのはかなり大変なことなのだ。映画なんかの方が情報が多いから、どうしてもそっちに流れるわな。料金の違いもあるけど、一定の可処分所得がある社会人の場合、数千円のオーダーならそれほど気にしないんじゃなかろうか。「面白そう」と確信できるかどうかが大きいと思う。情報の「量」に関しては、経済規模が小さいから仕方ないけれど、問題は情報の「質」、特に作り手側から発せられるものについてだ。

つい先日も、ある劇団からEメールによる公演案内がきて、何月何日から上演します、面白い作品なのでぜひ観てください、てなことが書いてあった。

そりゃそうでしょう、作る以上は面白いと思ってやってるでしょう、みんな。そんだけでいいのか?

関係者の知り合いでもなく特にファンでもない人間が、ゴマンとある興行、芝居の中で、これを選ぶ理由が果たしてあるんだろうか。「他にアピールすべきことはないんですか?」と思ってしまうわけ。

僕はささやかながら音楽の批評や制作に携わっているので、こういうことを書くとそっくり自分に跳ね返ってくる。上の「芝居」を「ジャズ」に置き換えてもほとんどそのまま正しい主張になるだろう。マイナーなミュージシャンの観客動員力はマイナーな小劇場劇団以下である。「こんなすごい演奏をこんな少人数しか体験しないなんて!」と思うことはしょっちゅうで、その思いはこのblogを続ける原動力の一つだ。「じゃお前はどーなんだ、ちゃんと伝えているのか」と問われれば、「スミマセン」って感じである。

それでも、だ。

演劇って「言葉」が大きな比重を占める芸術でしょう。言葉できちんと伝えなくてどうする。かといってもちろん、長々と説明されたって興ざめだ。難しいのはわかるけどさ。

あなたたちの言葉のセンスを見せてくださいよ。


以下余談。
自戒を込めて言うけど、音楽ライターとか音楽評論家って、本当の意味で「言葉のプロ」と言える人は非常に少ないと思う。知識や体験を切り売りしてるだけで。

だいたいあれだ。音楽評論家の書くライナーノートってのがたいていつまらない。知識として参考になればそれでもいいけど、「こんんものいらん」と思うことも多い。真の「言葉のプロ」が書いたライナーノートが読みたい。

というわけで、10月に発売される喜多直毅「HYPERTANGO II」のライナーノートは、某劇作家にお願いしました。乞御期待。
(宣伝オチでした)

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2004.07.28

CD制作日誌(吉祥寺からの終電にて)

湯島キャンパスで午後の授業を2コマ終えてから、大急ぎで吉祥寺に向かう。プロデューサーとしてミキシングに立ち会うためだ。

録音もワクワクするけど、CDの音が完成されていく過程というのもまた、なかなかの興奮が味わえる。授業の疲れなんか瞬く間に吹っ飛んだぞ。

基本的にはミュージシャンの意向を尊重しつつ、けっこう口だしする。ときおり我にかえって「何様のつもりだよ」と自分にツッコミを入れるのだが、第三者的意見だって必要には違いない。開き直ってやるしかないのだ。

そうはいっても、僕に特別な能力があるわけではない。名盤を作るのに名プロデューサーは必要ないということ。その確信はますます深まっていく。これについてはいずれあらためて述べたい。

今日はとにかく、楽しかった。

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