2006.05.27

燐光群「民衆の敵」上演開始

6月4日まで。六本木・俳優座劇場にて。
燐光群のサイトはこちら

たぶん明日観に行って感想書きますが、自分への覚書も兼ねて。

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2006.02.05

後期試験が終わったら「イノセント・ボイス」はとりあえず観とこう

シネスイッチ銀座にて、2月一杯はやってるそうなので。
続くvfsh0032.JPG

続き。
今日はまず、北村想脚本・劇団青い鳥『もろびとこぞりて ver.2,3』を観に表参道のスパイラルホールへ。

『もろびとこぞりて』はかつて想さんが主宰した劇団プロジェクトナビ(現在は解散)で上演された作品だが、今回のは改訂版ではなく、全面的に書き直された新作。想さんの新作が東京で観られるなんて、それだけで嬉しい。

喜多直毅「HYPERTANGO II」を制作したとき、ライナーノートは「評論家」なんかじゃなく、物書きとして一流の人に書いてもらいたかったので想さんにお願いした。ライナーノートも一つの「作品」であるべきと思うからだ。「HYPERTANGO II」の楽曲は今ではダウンロード販売で1500円ほどで買えるけど、1000円ほどのCDとの差額は茂本ヒデキチさんのイラスト(内側にもあり!)と想さんのライナーノートの分だと思ってもらえればいい。

今回の芝居については万人受けするような内容ではないものの、想さんらしいウィットと芝居への愛情が満ち溢れた作品。派手なカタルシスがあるわけではないけれど、じんわりココロに響くラスト。


観終わったらまだ4時前ということで、映画「イノセント・ボイス」を観に銀座へ。前から気になっていたところに、ギタリスト坪川真理子さんが御自分のサイトのBBSに書かれた感想がダメ押し。こりゃ観とかないとまずいな、と。

先日大友良英さんにインタビューした際、「中南米の文化は素晴らしいよねえ」という話で盛り上がったことを思い出す。ここに突きつけられる、もう一つの中南米の現実。舞台はエルサルバドル。

以下ちょっとネタバレ(観る前に読んでも問題ない程度に抑えるつもりですが)。

ギターケースをかかえてやってくる反政府ゲリラ。昭和天皇が亡くなる前、ギターケースを持って皇居付近を歩いていたら警察官に開けて見せろと言われたという冗談みたいなほんとの話があるが、このケースにも武器は入っていなかった。銃弾の雨のなか、ゲリラはギターを爪弾きプロテストソングを歌う。

いかにも何ヶ月も同じ弦を張りっぱなし、という感じのボヤけたギターの音色がいいんですな。チューニングも微妙に狂っていたり。コード進行がなんかシャレた感じで、さすが中南米。

主人公の少年は生き残るが、これはネタバレではない。彼自身が語り手なのだから、生き残ることに必然性がある。よくハリウッドのアクション大作で、かっこいいヒーローが間一髪の危機を何度も乗り越えてハッピーエンド、みたいなのがあるけど、ああいうのを観るたび、

おまえ、運が良かっただけじゃん

とツッコミを入れたくなるのはワタシだけでしょーか。いくら「奇跡的」な出来事でも、しょせん作り話なんだからどーにでもなるよなあ、とつい冷めた見方をしてしまう。

イノセントボイスは、死と隣り合わせの日常が現実にあったという話。「奇跡」は少年が生き残ったことではなくて、たまたま生き残る方に入った彼が脚本家としての才能に恵まれていたことだろう。事実を描いているから重みがあるということもあるけど、脚本がすごくよくできていると思う。ラテン的な明るさを持ったシーンが随所に織り込まれていて、コントラストが鮮やか。流れがとても自然だ。

音楽はちょっと残念。終盤の悲惨なシーンで「いかにも」てな感じの曲が流れる。監督のルイス・マンドーキはハリウッドで成功した後母国メキシコに戻って本当に撮りたい映画を撮り始めたらしいけど、そんなところに「ハリウッドスタイル」を取り入れなくてもよかったのになあ。プロテストソングの美しさ・力強さが印象的だっただけに、余計にそう思う。

【追記】
ひとつ書き忘れてました。パンフレットの解説、あれはなんとかならないものか。

ストーリーと重要シーンの描写が8割以上。映画を観てない人への説明なら、それもありかもしれませんよ(ネタバレの問題は別にして)。でもパンフは映画を観た後に読むものでしょーが。わざわざ説明してくれなくてもわかってるんですけど!そもそも あらすじ は別に書いてあるので重複も多い。

「現代パフォーミングアーツ入門」では毎回の授業後にレポートを提出してもらってますが、「鑑賞体験を共有しているのが前提なのだから、観れば(聴けば)誰でもわかるような客観的事実を並べて字数を稼ぐのはダメ」と最初に釘を刺します。独自の視点を提示してくれないと。これは文章の基本だと思うんだけどなあ。

プロの方には是非、お手本を見せて欲しいものです。

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2005.10.30

ユーロスペースで上映中のRosas in Filmsについて、そしてコンテンポラリーダンス業界における致命的な情報の欠如について

今年のGWにRosasの映像作品『Achterland』を観た後のやるせない気分について書こうと思っているうちにRosas in Filmsが始まってしまった。11月4日まで渋谷ユーロスペースにてレイトショー。ダンスと現代音楽、そのいずれかに興味がある人は必見です。

今回上映されるのは『Counter Phrases』『Hoppla!』『Achterland』の3作品。偶然にもGWに僕が観た3作品とちょうど合致している(GWの上映のときは7作品ぐらい上映されていた)。どれを観ても楽しめると思うけど、強いて言えば『Counter Phrases』は音楽もダンスも抽象性が強いから、1本だけ観るなら避けた方が無難かな。ただラストのライヒとのコラボレーションはめちゃカッコイイので、「ドラミング」「ファーズ」「レイン」といった一連のライヒ×ローザス作品が好きな人にはお薦め。

逆に1本だけ観るなら『Achterland』がお薦め。84分とボリュームたっぷりで、ROSASのさまざまな魅力がギッシリ詰まっていると思う。特に印象的だったのが無伴奏ヴァイオリン独奏とダンスのコラボレーション。このヴァイオリニストはタダモノじゃないぞ、とエンドロールを凝視していたらArdittiという文字が目に入った。

アルディッティって、あの有名なアルディッティ弦楽四重奏団の!?

と書くといかにもよく知ってるみたいだが、実はコンサートはおろかちゃんとCDを聴いたことすらない。しかし裏を返せば、そんな僕でも名前ぐらいは知っている人気カルテットだということですよ。来日公演のチラシも何度か目にしている。現代音楽中心のカルテットとしてはクロノスカルテットの次くらいに有名じゃないの?

自宅に戻ってネットで検索してみると、やはりそうだった。アルディッティカルテットのリーダー、アーヴィン・アルディッティIrvine Arditti。彼が舞台(劇場ではなく撮影用のスタジオだが)の端でイザーイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタを演奏し、それに合わせてダンサーが踊るのである。ただ演奏しているだけじゃなくて、ほんの一瞬だけどダンサーとのちょっとしたカラミまである(観てのお楽しみ)。別のシーンではRolf Hind というピアニストがリゲティのエチュードを演奏。この人については全然知らないけど、検索すればやはりCD等がゾロゾロと引っかかるから、その道では知られたピアニストなのだろう。

つまりこれはクラシック・現代音楽ファンが観ても相当楽しめるんじゃないの?コンテンポラリーダンスなんか全然知らなくても。少なくとも現代音楽に疎いダンスファンとは別の楽しみ方ができるはず。

で、冒頭の話に戻る。期せずしてこういう「発見」をするのは嬉しいことではあるのだけど、僕は単に運が良かっただけである。「ローザスならハズレはあるまい」と適当に選んだだけ。見逃していた可能性も十分ある。だってアルディッティが出てるなんて、誰も教えてくれないんだから!

僕が事前調査を怠ったのが悪いのだろうか?そうとも言えないだろう。ユーロスペースのサイトには、「音楽: ユージン・イザーイ、ジョルジュ・リゲティ」としか書かれていない。先ほども確認のためにいろいろキーワードを変えて検索してみたけど、『Achterland』にアルディッティが出演しているという情報は、日本語のサイトではついに見つからなかった。もちろん英語のサイトまで調べりゃいいんだけど(実際そうやって確認したのだけど)、そこまでさせんなよー僕みたいな素人に。

ダンス業界は音楽や演劇と比較して"書き手"が不足している、というお話を関係者から伺ったことがあるのだけど、上のような客観情報の欠如というのは、それ以前の問題でしょう。かくして僕は、「ROSASの『Achterland』にアーヴィン・アルディッティが出演している」と公に指摘した最初の日本人となった。

のか?ほんとに。笑い話みたいだけど(違ってたら教えてください)。しかし笑っている場合ではないのだろう。これと似た状況が、ダンスに限らずいろいろな業界にあるに違いない。他山の石とせねばなるまい。

上と同様の「情報の欠如」についてMani_Maniさんのblogの『Counter Phrases』評でも指摘されていたのでリンクを張っておきます。

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2005.09.18

やっぱり期待通りの実力を見せてくれたジャブジャブサーキットと鈴木大介に惜しみない拍手を

17日はシアターグリーンと白寿ホールをハシゴ。

うっかり「ライブ・公演情報」に載せ忘れていたんだけど、20日まで池袋シアターグリーンで劇団ジャブジャブサーキットが「しずかなごはん」を再演中。摂食障害をテーマにした、ちょっとしたミステリーものです。観たことない芝居は勧めにくいのだけど、これは初演を観ているから問題なし。迂闊でした。

この日マチネで再見したらやっぱり面白かった。非常に丁寧な取材の上に書かれていると思います。「よく知ってるだろ、ちゃんと調べたんだぜ」という態度が芝居から垣間見えると興ざめなんだけど(これけっこうありがち)、そんなことはなくて、「患者の視点」が貫かれていると思う。作者の はせひろいち さん自身が一時期激ヤセしたのと無関係ではないだろう。将来医療関係者を目指す皆さん(注:うちは医療系大学ですからね)にこそぜひ観て欲しい作品。

夕方から富ヶ谷に移動して白寿ホールで鈴木大介さんのコンサート。武満徹「フォリオス」とブリテン「ノクターナル」が期待以上と言ってもいい絶品の出来。前者は武満にとって最初のギター作品なのだけど、ギターという楽器を知り尽くしたかのように美しい響きを聞かせる。才能ってのはこういうことなんだろうな、とつくづく思う。ギター作品を1曲しか残さなかったブリテンも然り。どちらも20世紀を代表するギターの名曲として輝き続けるだろう。

名曲の一つの要件は、表現の可能性の幅広さだ。ということはすなわち、演奏者の表現力も如実に現れる。フォリオスやノクターナルが名曲と言われてもピンと来ない人は、良い奏者の演奏で聴いていないのかも。大介さんのフォリオスには以前も感動したことがあるけど、この日はまた新たな表現に踏み込んだな、と感じた。終盤の迫力は鳥肌モノ。武満さんが大介さんのフォリオスを聴かずに亡くなられたのは返す返すも残念だ。

武満さんは晩年の病床で鈴木さんの1stCDを聴いて「かつて聞いたことがないような演奏をするギタリスト」とかなんとか言われたそうで、なんか「絶賛」というわけでもないし微妙な言い回しのような気もするのだけど、ひょっとするとCDそのものを誉めたというより、こういうフォリオスを演奏するような彼の才能の芽を感じ取っていたのかな、と思う。もし武満さんがその後も進化を続けた大介さんの演奏にじっくり接していたならば、彼のために新たな作品を書いたに違いない。

バッハも期待通りでした。大介さんの演奏で聴くと、ちゃんと本来の意味での舞曲に聞こえるんだよねえ。良い意味での軽さ。本当に踊りだしたくなるような。平たく言うとグルーヴ感。元はチェロやヴァイオリンの曲だけど、間違いなくギターでしか出せない味がある。しかしま、バッハに関しては以前やはり大介さんの演奏で神がかり的な名演の記憶があるのと、不運なことにシャコンヌのいいところで思いっきりケータイ鳴らしやがった輩がすぐ近くにいて集中力を削がれたので、これ以上の賛辞は控えておこう。

さて、集客はというと、さすがに前回よりよく入ってたな。音楽業界関係者も多い。「クラシックギター業界」(すなわち"身内"だな)だけじゃなくて、幅広いジャンルの音楽関係者から注目を集めるのも大介さんならでは。とはいえ、まだまだ空席があるのはもったいない。次回は12月17日。バッハの全無伴奏作品の中で個人的に最高傑作と思うBWV1012(チェロ組曲第6番)を含む、またしても注目のプログラムです。


BGM:クオン・ヴー(Cuong Vu)新譜「It's Mostly Residual」のサンプル(いや噂通りすごいなコレ・・・)

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2005.08.28

総選挙前に観ておきたい燐光群「だるまさんがころんだ」

27日、下北沢スズナリにて(東京公演は31日マチネまで)。

政治的な主張はしないといいつつ、こういった芝居を勧めたらある種の政治的主張をしていると思われても仕方ないのだけど。

ただ強調しておきたいのは、これはいわゆる「反戦芝居」とはちょっと違うということ。地雷の恐ろしさこそストレートに訴えているけれど、同時に観客を笑わせたり泣かせたり、といったエンターテイメントの姿勢は終始一貫しているのだ。

なんといっても構成が素晴らしい。親分の命令で地雷を買い求めるヤクザ、地雷工場で働く父を持つ一家、イラクに派遣された自衛官、地雷に翻弄される戦地の原住民、といったシーンが独立して展開しつつ、ラストシーンに収束していく様が見事だ。

とはいえ、これは「社会派演劇」には違いない。それはひとことで言えば、メディアとしての役割も担っているということ。たとえ作者の主張に共感できなかったとしても、それまで知らなかった・気付かなかった情報や視点を提供されるのは間違いないだろう。

初演は1年以上前だけど、ここに提示された状況はちっとも"古く"はなっていない。ただし「オランダ軍が守ってくれる」なんてのは今や過去の話。セリフは敢えてそのままにしてましたね。

おそらく「社会派」を敬遠する人も多いのだろうけど、僕はむしろ逆である。「純粋な娯楽」だったら、他にもたくさんある。演劇を選ぶ必然性をあまり感じないのだ。

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2005.08.07

朝日新聞連載「おやじのせなか」に燐光群・坂手洋二が登場

外出先で新聞を開いて見つけたのでとりあえずケータイより。

劇団燐光群が今月14日から「だるまさんがころんだ」を再演しますが、その主宰者が劇作家/演出家の坂手洋二さん。

社会派で知られる坂手さんが芝居抜きでプライベートについて語るのは珍しいかも。

写真だといかにも切れ者という感じでちょっとコワモテのことが多いんですが、この写真は温和な表情でいいですね。僕の知ってる坂手さんに近いイメージ。


さて燐光群も楽しみですが、その前に駒場アゴラでモンキーロード「らくだ論」。9日より。脚本は喜多直毅「ハイパータンゴ2」のライナーノートを書いて下さった北村想さん。演出が大西一郎さん。美術は燐光群でのお仕事も多い加藤ちかさんですね。

【追記】モンキーロード、初日に観てきました。面白かったですよ。

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2005.05.19

坂手洋二 v.s. 平田オリザ

って対決でもなんでもないのですが、同世代の二人の劇作家による作品が三軒茶屋のシアタートラムと初台の新国立劇場で同時上演中。

5月13日~22日 
まつもと市民芸術館企画製作第三弾
『いとこ同志』
作・演出:坂手洋二
出演:渡辺美佐子 串田和美 宮本裕子・佐藤アツヒロ
会場:シアタートラム http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/frame.html

5月13日~29日 

日韓友情年2005記念事業

『その河をこえて、五月』

作 : 平田オリザ/金 明和

演出 : 李 炳焄/平田オリザ

http://www.nntt.jac.go.jp/season/s262/s262.html

『その河をこえて、五月』は朝日舞台芸術賞グランプリ受賞作の再演。新国立劇場は半額の「当日学生券」があるんですね。学生は観なきゃ損。あと1500円のZ席(ただしこれはいわゆる「見切れ席」かも)もあります。いずれも枚数は限られているでしょうから早めに劇場に行きましょう。

坂手さんの方は新作で料金も高いのですが、評判はとても良いようです。朝日新聞18日夕刊に劇評が出てました。

実は僕は2作ともまだ観てないのですが・・・

観たことがない芝居を勧めるのは本当に勇気がいりますが、この二人ならまあ、ハズレはないと思います。たしか二人とも1962年生まれ。どういうわけかこの世代って優れた劇作家が多いんですね。

坂手さんの方は今週末まで。なんとかせねば!


【追記】無事2本とも観られました。いやどちらも期待通り!「いとこ同士」は終わってしまいましたが「その河~」は29日までやってます。

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2005.04.24

GWは早起きして渋谷にローザスROSASを観に行こう

昨日から始まった渋谷ユーロスペースのモーニングショーで観て来たので、とりあえずケータイより第一報。

やっぱローザスはかっちょええのー
(続く)

続き。
「生」にこだわる現代パフォーミングアーツ入門だけど、ここではローザスのフィルム作品をお薦めします。理由は3つぐらい。

1.単純に(たぶん)誰が観てもかっこいいコンテンポラリー・ダンスであるということ。
2.かといっていきなり「生」の来日公演を勧めるにはチケットが高い。フィルムなら1本1000~1200円で観られる。
3.ステージでの上演を記録したものではなく、フィルム用に演出されているので「生」にはない魅力もありクオリティが高い。

1.について補足しておくと、僕は長らくダンスに対してある種の偏見を持っていたのですね。古典的なものは人間の動きを無理やり(たいていは不自然な)「型」に押し込めるイメージ。逆に前衛舞踏みたいなものは「変な動きは面白いけど、感動はしないなあ」と。

ところが数年前に知人に勧められ、当日券を買って最前列(全体を見渡すには不適当なので意外と売れ残るらしい)で観たローザスの「ドラミング」は衝撃的でした。ああダンスって、いや人間の肉体ってこんなに自由で、かっこよかったのか、と(素人臭い感想ですみません)。大げさに言えば、人間のカラダというものに対する認識がその日を境に変わったのだ。

「認識」といえばですよ。

うちは医療系の大学です。解剖学は全学科必修のはず。実習もある。「人体の不思議展」が評判になったのは記憶に新しいけど、あれって何がそんなにウケたのかというと、一つには自分達にとってもっとも身近な存在である人間の肉体が、文字通り「ひと皮剥くと」こうだったのか!という驚きでしょう。うちの学生はアレを「生」でじっくり観察するわけだ(やや不謹慎な表現かとは思いますが揶揄する意図はありませんのでなにとぞご容赦を。献体に応じてくださる皆様にあらめて感謝いたします)。

そういう経験をし、人体について深く学んだ人間は、もはや我々一般人(僕自身は教養部の教員ですから医療関係者ではありません)とは、人体の見え方が違うのではないか。

自分と違う感性を持った人間の鋭い視点というのは、もうそれだけで面白いのだ。「現代パフォーミングアーツ入門」の授業をやる大きな楽しみの一つはそれ。みんなぜひローザスを観て、感想を聞かせてください。

ちなみにこの日僕が観た『Counter Phrases』は現代音楽とのコラボレーションで、曲ごとに1つの場面が展開していくというものでした。撮影はほとんど屋外。「こんなところで踊っちゃう!?」というのもあって楽しい。どうしても映像に意識が持っていかれるから無調・無拍子の音楽は特徴がつかみにくくて、もっとも印象的だったのはライヒのシンプルな力強さだな。

上映スケジュールと作品解説はよく見るとユーロスペースのサイトにありました。しかしこれ見づらい・・・フレーム内にリンク張っておきます。ちなみにユーロスペースはスクリーンが小さいので前方の席がお薦め。


もうひとつ付け加えておくと、古典的なダンスの一つであるクラシックバレエに対する僕の偏見と無知は、以前とある学生がレポートに書いてくれたバレエへの熱い思いを読んでかなり解消されました。僕自身の視野を広げる意味でも、そういったものをもっと見聞きしたいと思います。

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2005.04.19

日曜の午後からフラっと青年団プロジェクト公演「隣にいても一人」を観に出かけ、「おしゃれジプシィ」のライブ(ベリーダンス付き)を観ながら夕食を取るという、優雅な東京生活

まあ「フラっと」と言っても、前日に予約はしたわけですが。17日、まずは青年団プロジェクト公演「隣にいても一人」を観に、うちから徒歩3分の駒場アゴラ劇場へ。

いやあ、何度観ても面白い芝居だな。今年度も法人支援会員になったので、さっそくチケット引換券を使おう、というのもあるわけだけど、会員じゃなくても映画当日券より安い1500円。このコストパフォーマンスに対抗できる娯楽がほかにあるのか?「しずかな演劇」は苦手、という人もそこは認めざるを得ないでしょ。

ちなみにこの作品を観たのは3回目かな。観たことがある人はわかると思うけど、役者が変わると微妙にキャラクターが変わってまた興味深い。今回は「新婦」役の角館玲奈さんが「新郎」役の臼井康一郎さんより年上だったようで、前は「妹」だったところが「お姉さん」に代わっていたりした。セリフの中に出てくる年齢は実年齢だろうか。たしか角館さんは僕が青年団を観始めた頃、「カガク」シリーズの学生役とか初々しくやってたと思うんだけど。あれから随分経ったんだなあ、と芝居と関係ない部分で感慨に耽ったり。

それにしても本当によくできた脚本である。元は外部からの依嘱で書かれたこともあってか、テーマも構造もわかりやすい(最初はナンダ?と思うが観ているうちにすぐわかる)。なにせ平田作品にしては珍しく暗転が3回くらいあるし、「夫婦って結局何よ?」という問いかけがきわめてストレートになされる。コアな平田オリザファン(いるのか?)だったら「こんなのオリザじゃない!」とか言いそうだ。

そういう作品だと知っていたから、安心して他人に勧めることができた。同僚、学生各1名ずつと一緒に観たが、なかなか良い反応。観たことがない芝居を勧めるのは勇気がいるからなあ。


ところで僕の場合、東京に出てきて芝居を観るようになったきっかけは、高校生のとき地元で観た「上海バンスキング」にめちゃ感動したとか80年代演劇ブームとか初恋の相手が演劇少女だったとかいろいろあるが、一番大きいのは

東京に出てきたんだから、芝居ぐらい観とかないとまずいだろう

という感覚である。僕は人一倍「教養」というものにコンプレックスがありつつ教養部で教えてたりするわけだが、なぜかこの「まずいだろ」という感覚が古典文学とか思想・哲学といった方にはほとんど向かなくて、「ゲンダイオンガクぐらい聴かないとまずいだろ」「フリーインプロヴィゼイションというのもわかったフリをしておかないとまずいだろ」という方面に向いてしまった。

お陰で今はなき西麻布ロマニシェスカフェでギターを掻き鳴らす若き日の大友良英さんを見た話を大友さん本人にして感心されたりして。というのも場所柄、学生が行くには高い店だったのだ(大友さんも「客として行くのは勇気がいった」とおっしゃっていた)。よくそんな金あったな、と今さらながら思うが、なんとかしてたんだなあ。

芝居はライブと違って別にドリンク代を取られたりしないが、それでもそこそこのクオリティが保証されたもんを見ようと思ったら、通常は最低3000円くらい覚悟しないといけないだろう。それを考えると今回のように定価1500円、支援会員になると(一回あたりは)それ以下で観られて、脚本も役者も高いクオリティが保証されているというのはありがたい。別に支援会員になったからヨイショしてるつもりはなくて、率直な感想である。

そして、こういうのは「東京に住んでいればこそ」なのである。文化の東京集中は東京近郊以外に住んでいる人にとっては大問題なのだろうが、東京に住む観客・リスナーの立場からすれば、この利点を最大限活用しない手はない。金が無かったら「安くていいもの」を探せばよい。東京ではそれが可能なのだ。

が、そのように思わない人がけっこう多い、というのが、実はもっと大きな問題だと思うんだけど。

というわけで、このページに辿りついてしまったうちの学生のみんなに言いたいのは、以上を読んで自分のおかれている状況を理解したら、もはや「よく知らない」とか「チケットが高い」というのは言い訳にならないということ。それでもまだ行動しないならそれは、「芝居を観ない」「生演奏を聴かない」という選択を積極的に行っているということである。だって全然金がないならともかく、ディズニーランドとかは行ってるだろ。情報はその気になれば、インターネットでいくらでも手に入る。大学なら使用料はタダだ。


夜は「おしゃれジプシィ」のライブを観に中目黒「楽屋」へ。ここは料理も美味いし、ワインなども手頃な値段で(詳しくないけど、たぶん)なかなか良い品揃え。「おしゃれジプシィ」はリーダーのウード奏者佐藤慶一さんのオリジナルを演奏するアコースティック・プログレバンド(いろいろ考えたが、この呼び方が一番実態に近いと思う)だ。「現代パフォーミングアーツ入門」の授業でお馴染みのヴァイオリニスト喜多直毅さんも参加しており、アドリブ・ソロをガンガン弾きまくる。途中からアラブ映画祭2005(24日まで・詳細はこちら)の関係者もいらして、映画祭の宣伝を少々。アンコールのアラブ音楽で盛り上がる。これも東京ならではだなあ。

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2005.04.16

今年も駒場アゴラ劇場の法人支援会員になりました

ケータイにて投稿。先ほどアゴラ劇場事務所で手続きを終えたばかり。

というわけで今年度も引き続き同劇場のチケット引換券が超低価格で利用できますので、奮って利用して下さい。

【追記】チケット引換券の利用についての概要は昨年のこの記事を参照のこと。なお今年度から、ワークショップにもチケット引換券が利用できるようになったそうです。

利用希望者の少なさから中断を検討していましたが、ありがたいことに複数の同僚教員から協力の申し出がありましたので、継続することにしました。今後利用する学生は彼らに感謝して下さい。

明日さっそく「隣にいても一人」を観に行きます。これは再演なので面白さは保証付き。芝居好きの人はもちろん、ちょっと興味があるだけの人も気軽にどうぞ。

なお「(仮称)入学おめでとうキャンペーン」ということで、新入生(新編入生も含む)は5月末まで&先着5名まで無料とします。

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